2014年度より、信州大学医学部は世界標準の医学教育をめざして、臨床実習のプログラムを大きく改変しました。実習先病院の選択肢が150通りとなるよう「実習の場」を拡大し、世界標準である72週をめざして「実習時間」の拡充をはかりました。また、多くの日本の大学でも採用している見学型(ポリクリ)の実習内容を、診療参加型(クリニカルクラークシップ)へと移行。学生が医療チームの一員に加わり、患者の診療、カルテ記載、患者マネジメント等を実施するようになりました。これらのより高度な臨床実習は、長野県内約30病院の協力のもと、地域に深く密着した形で実施されています。
5年生からの参加型の臨床実習だけでなく、医学部では1年生の入学当初より質の高い医療を目的としたカリキュラムに参加していきます。その一例が「医学部新入生合同ゼミナール」です。医師を目指す「医学科」、看護師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士などを目指す「保健学科」の枠を越え、「より良い医療のあり方について」というテーマのもと、実際の現場で欠かせないチーム医療の重要性を学んでいきます。ゼミでは、自分が感じた疑問点を整理し、それに関連する情報を集めて内容を吟味。自分なりにまとめたものをわかりやすく他者に伝える過程を通じて、「能動学習」「問題基盤型学習」のポイントを体得していきます。
教育方法や内容を改善するために、教員に向けた取り組みを組織的に行うFaculty Development(FD)を信州大学医学部では積極的に取り入れてきました。毎年秋には、これから医学教育を担当する教員またはこれまでFDに参加したことのない教員を対象に、1泊2日のワークショップ形式のFD研修会を開催。社会から必要とされる良医を育成するために必要な、カリキュラム立案能力を修得することを目的にしています。また、参加型臨床実習プロジェクトが始動した2014年度からは、実習の受け入れ先となる県内の病院に「出張FD」を行い、学生が医療チームに参加することに対して、建設的?具体的な意見が交わされています。