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自然界の仕組みに学んだ"水"を使った化学

ほのかに青白い、セルロースナノファイバーと水だけから出来たハイドロゲル

ほのかに青白い、セルロースナノファイバーと水だけから出来たハイドロゲル

化学というと色々な薬品を使うイメージがあると思います。化学反応によって何かを作る時には、原子や分子などの組み合わせを変える必要があります。原子や分子は何らかの化学結合で繋がっているので、それを一度切って (結合を弱めて)、また別のものと繋げる (結合を強める) ことが必要です。結合を弱めたり強めたりすることは、目的の原子や分子の周りに「別の物質」を置くことで可能です。この「別の物質」を置くことが、色々な薬品を使うということになります。では、他の方法はないのでしょうか? 自然界には、実験室にあるような薬品はほとんど存在せず、"水"を中心とした化学反応が行われています。その理由は、"水"の機能を最大限利用して「別の物質」をできるだけ使わない仕組みになっているからです。温度や圧力などをコントロールすることで、"水"の様々な性質 (極性やpH) を変えることができます。将来的には、自然の仕組みに学んだ"水"を使った化学にシフトしていくことも考えられます。


化学?材料学科の長田 光正 准教授は、"水"の機能を活用した化学を探求しています。木はセルロースという高分子が集まったナノファイバーという細い繊維から成り立っています。このセルロースのナノファイバーが"水"に分散した液体を、温度160℃、圧力0.6 MPaで30分程度処理すると、写真のような色々な形状を維持したハイドロゲルになります。これはナノファイバーの周りの"水"の環境を適切にコントロールすることで、ナノファイバー同士の間に働く力を変えて、部分的にナノファイバー同士を接着しているためです。このように薬品を使わなくても、"水"の温度や圧力を操作することで、原子や分子の間の力を制御する188bet体育_188bet备用网址を行っています。

(掲載期間 平成31年 1?2月)