くことのできない場所に行けるよう、場所の選定を行いました。また疑問に思ったことを実務者の方にしっかりとぶつけてもらう時間も多く設けるようにしています」と生態学を専門とする浅野郁助教。金沢教授、加藤准教授とともに、実地研修のカリキュラム設計を担当してきました。「『環境』は非常に幅広い分野です。多岐にわたりすぎていてどう学んでいけばいいのか分からないという学生も多いかもしれません。そうした中、このコースは学部関係なく、1、2年生という専門課程に入る前の早い段階で履修できる点にとても意味があると感じています。学生にはここで学んだことを自身の専門課程へのステップにして欲しいと考えています」(浅野助教)。今年度の「環境マインド実践基礎論」の実地研修は計4回。11月には座学の講師にも招いた「NPO法人いいだ自然エネルギーネット山法師」(飯田市)という市民有志で組織された団体が運営する、化石燃料ゼロハウス「風の学舎」を見学しました。2008年にオープンした太陽光発電、薪ストーブ、囲炉裏などを備えた化石燃料ゼロで過ごすことのできる施設です。同法人は、その利用体験を通じ、脱炭素社会に向けたライフスタイルの提案、自然エネルギー利用の推進を進めています。さらに11月には上田市にある「稲倉の棚田」で、実際の農作業体験などを行いながら、グローバル編で予定している農山村調査の入口を体験しました。2年次以降の「環境マインド実践ゼミ」は、受け身ではなく「自分の足で動き、学習する」ことに主軸を置いたカリキュラムであることも特徴的です。とくに後期に予定しているグローバル編は、フィールドを海外に移します。来年度予定しているフィールドはマレーシア。金沢教授が実際に現地調査で利用している調査手法等を用い、現地での暮らし、考え方を知り、課題を探ります。また人々の暮らしや社会を通した部分だけでなく、浅野助教が専門とする動植物の保護と利用いった観点からも研修を行います。マレーシアは現在もアブラヤシのプランテーションに見られるモノカルチャー農業が主流です。農地を広げるために無理な火入れを行い、山火事が頻発しています。「農地の形状は日本の棚田と似ていますが、受ける印象は全く違う。マレーシアではモノカルチャー農業からの転換の必要性が議論されていますが、そのヒントがもしかしたら日本の棚田での暮らしにあるかもしれません。日本の現状との比較をしながら、現地の人が何を考え、何を望んでいるのか、サスティナブルとは何か、どのような時間軸で考えていくべきものなのか。そのすり合わせを、統合的な視野で考えていかなければなりません。大学生、しかも1、2年生という若い世代がそうしたことを真剣に語り合うこと自体、とても大切なことだと思います。そしてその時間は決して無駄にはなりません」(金沢教授)。SDGsや気候変動、プラスチックごみ問題などが世界的に注目されていることもあり、環境に関わるニュースやキーワードは、さまざまなところで見かけるようになりました。「これからは、経済活動においても、環境に取り組むことで価値を生み出していくことが求められます。社会全体が変化してきているのは確か。脱炭素、循環型社会、自然との共生など、環境に関わるキーワードは数多くありますが、学生たちには自分の言葉で周囲に語り、また実践できる人材になってほしい。今はじまっている実践基礎論の受講の様子をみていても、積極的に学んでいる様子が感じられます」(加藤准教授)。信州大学が長年取り組んできた環境教育。社会の変化とともに、信州大学らしさを維持?発展させながら、新しいステップへと進んでいます。浅野 郁信州大学全学教育機構 助教専門は群集生態学、熱帯林生態学。生物多様性の維持機構の理解を進めるために、東南アジア低地熱帯雨林を主な調査地として様々な生物間相互作用の特性の解明に取り組む。特に、植物の花や種子を餌資源とする昆虫群集に関する188bet体育_188bet备用网址を行なう。環境マインド実践基礎論フィールド授業の様子。写真はいいづなお山の発電所(長野市)バイオマス発電の見学(2019.10月)おひさま進歩エネルギー(株)(飯田市)にて太陽光発電の見学(2019.11月)稲倉の棚田にて、稲藁のすき込み作業を行う(2019.11月)06
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