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上げました。「ふらふらと揺らぎが起こると、ふとした瞬間に隙間やポケットが現れることがあります。これが、試験管内ではアンドラッガブルな疾患標的タンパク質でも、生きた細胞内であればドラッガブルになる理由です」と梅澤助教。では、実際のスクリーニングでも生きた細胞を使えばいい―というと、決してそうではありません。生きた細胞を使う場合は、多大な手間とコストがかかり、とても現実的とはいえないからです。生きた細胞内の状態を試験管内で再現できれば、ドラッガブルとなる疾患標的タンパク質が増えるはず―そこで喜井教授らが確立した新技術が、「温度ジャンプ」です。188bet体育_188bet备用网址を進める中、リン酸化酵素「DYRK1A(ダークワンエー)」の中間体を標的とした阻害剤を世界で初めて発見、「FINDY(フィンディ)」と命名した(Kii et al., Nat Commun. 2016)。上)バイオメディカル188bet体育_188bet备用网址所 梅澤公二助教。画面に映るのが、中間体の揺らぎを可視化する分子構造のシミュレーションモデル。右)大学院総合理工学188bet体育_188bet备用网址科(農学専攻)修士課程 古家岳さん。「温度ジャンプ」では疾患標的タンパク質と化合物を入れた試験管を専用の実験機器に入れてスイッチオンするだけ。「温度ジャンプ」は、疾患標的タンパク質と化合物を入れた試験管(マルチウェルプレート)を、一般的な分子生物学実験であるPCRに用いられる機器(サーマルサイクラー)に入れて温度を上げるだけです。しかしこれまで全く行われてこなかったのには、理由があります。そもそも、中間体を創薬標的とする188bet体育_188bet备用网址は、世界を見渡してもほとんど例がありません。それは、準安定とはいえ、存在確率が低い中間体は、ほんのわずか信州大学と大学が持つ特許を管轄する信州TLOとのコラボで制作した、特許技術「見える化」映像シリーズ第6弾の紹介映像もご覧ください。な時間しか存在しないため、創薬の標的対象にならないと潜在的に考えられてきたからです。しかし喜井教授らは、神経疾患に関与するタンパク質であるリン酸化酵素「DYRK1A(ダークワンエー)」の中間体にのみ選択的に結合する、「FINDY(フィンディ)」と名付けた化合物(阻害剤)を発見することに成功し、これまでの創薬188bet体育_188bet备用网址の常識を覆したのです。事実、細胞内に一過的にしか存在しない中間体を標的とした阻害剤の発見は、世界初でした。さらに188bet体育_188bet备用网址を進める中で、「中間体を標的としてスクリーニングするからこその利点も見えてきました」と喜井教授。FINDYをより詳細に調べると、DYRK1A以外のリン酸化酵素には阻害活性を示さず、高い選択性を有していることも分かってきたのです。「高い選択性がある、ということは、標的タンパク質以外に対して作用しにくい、つまり副作用の少ない低分子医薬品の実現へとつながる可能性もあると考えています」(喜井教授)今後、この技術を発展させ、創薬関連企業と連携して、新しい作用メカニズムに基づいた低分子医薬品の創出への道を拓きたいと言う喜井教授。膨大な時間と資金、労力を投資しても、創薬に成功する確率は極めて低い(※2)とされる中で、新しい創薬概念である「温度ジャンプ」による創薬成功確率の大きなジャンプ(=飛躍)が期待されます。(※2)日本製薬工業協会調べ10準安定な状態である「中間体」に着目

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