統合報告書2023
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ビジョンと経営戦略活動実績ガバナンス人と地域の資産財務情報新しい分解機構で目指す、プラスチックの「ケミカルリサイクル」と「環境分解」海洋プラスチック問題への関心が高まる中、サステイナブルな世界をつくる技術に期待が寄せられています。「ケミカルリサイクル」はその一つで、プラスチック(高分子)を化学分解し、再び高分子を合成する、分子レベルでのリサイクル技術です。品質劣化のないプラスチックを再生できることから、“究極の資源循環法”として注目されています。プラスチックの中でも、ビニルポリマー(高分子の一種)は特に分解が難しい存在です。繊維学部の髙坂泰弘自然エネルギー利用の物質循環のイメージ髙坂188bet体育_188bet备用网址室の様子は本学動画コンテンツ「信州のファーストペンギン」で詳しくご覧いただけます信州大学先鋭領域融合188bet体育_188bet备用网址群先鋭材料188bet体育_188bet备用网址所学術188bet体育_188bet备用网址院(繊維学系)髙坂 泰弘准教授准教授は、ビニルポリマーの新しい分解機構を提案し、この課題の解決に挑戦しています。2019年には、頭痛薬として知られるアスピリン(アセチルサリチル酸)を原料に、ケミカルリサイクルが容易なビニルポリマーを開発しました。プラスチックごみの削減や化石資源の枯渇防止に向け、その実用化が期待されています。髙坂准教授は、環境中で分解可能な高分子の開発にも取り組んでいます。2020年には、アンモニアで分解する新型ポリエステルを報告しました。この分解機構を応用して、海洋で分解可能な高分子材料の開発を目指しています。偶然の発見から生まれた分解性ポリエステル2016年、髙坂准教授は自身が開発した新型ポリエステルの高性能化を目指し、化学実験を行っていました。ところが、実験後のサンプルからは、一向にポリエステルの存在が確認できません。調査の結果、予期せぬ反応が進行し、ポリエステルが完全に分解したことが明らかになりました。ポリエステルは安定な物質で、その分解には高温や強アルカリなどの過酷な条件が必要になります。一方、開発したポリエステルは、室温で穏和な反応剤を混合するだけで完全に分解しました。新型ポリエステルがもつ特別な化学構造が、分解性を高めていたのです。現在では、これらの発見をもとに、環境中で分解する高分子材料の開発に取り組んでいます。その一環として、髙坂准教授は、プラスチックによる海洋汚染抑止を図る国家プロジェクト※にも参画しています。※)ムーンショット型188bet体育_188bet备用网址開発事業Integrated Report 2023 Shinshu UniversityPRODUCTS髙坂准教授は自然エネルギーを用いた資源循環にも注目しています。現在、水力発電で海水を電気分解することで、水酸化ナトリウムと塩素が製造されています。この水酸化ナトリウムをプラスチックの分解に使用するとともに、生じた分解物は塩素を用いてプラスチックの原料物質を再生するアイディアです。髙坂准教授は塩素化学を扱う企業との連携を通して、このアイディアを着想しました。ケミカルリサイクルを事業化する際の課題の一つは、化学反応の際に掛るエネルギーコストです。自然エネルギーを利用したシステムが実現すれば、この課題を解決できます。また、髙坂188bet体育_188bet备用网址室は2023年4月から、繊維学部の長田光正188bet体育_188bet备用网址室、国立188bet体育_188bet备用网址開発法人海洋188bet体育_188bet备用网址開発機構と連携し、水を用いたビニルポリマーの分解技術の開発に着手しました。化学物質を使用しない資源循環に向けて、新たな技術創出が期待されます。25自然エネルギーを利用したビニルポリマーの資源循環原料物質OOOOOOOOOHOHプラスチック水力発電前駆体CH?CH?■■OOOO活動実績環境への取組進行する海洋汚染にストップをかける環境配慮型プラスチックの創製188bet体育_188bet备用网址繊維学部の髙坂188bet体育_188bet备用网址室では、資源循環や環境分解が可能なプラスチックの開発に取り組んでおり、サステイナブルな社会を実現する取り組みとして注目を集めています。02

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