味わうためには,目では捉えにくいものこそ見抜く必要があり,そのためには,「なぜ頷いたのか」「なぜわざわざ教師をテントに招いたのか」のように,行為の裏側にある意味を探ることだと考えている。 (4)中学校~学びの先にある新たな自分を予感し,確かにしていく【教科等の総合化】~ 【事例①】教材との出会いで生徒が抱く「思いや願い,問い」と,そこから始まる探究の中で生徒に働く見方?考え方を見通す教材188bet体育_188bet备用网址 単元名:「自分の感じで『浅間節(C)』」(中3年 音楽) 地域に伝わる民謡「浅間節」による実践を前に,教師がまず行ったのは,生徒たちの顔を浮かべながら,「浅間節」に出会った生徒がもつであろう「感じ」を想像することだった。授業者一人ではなく,複数の教師が集まって,生徒の心がどう動くかについて語り合うことで,予想される生徒の姿は,どんどん立体的になっていった。そして,それらを学習指導要領に示されている「音楽の見方?考え方を働かせている姿」とのつながりを踏まえて再構成していくと,生徒が探究のサイクルを描きながら題材を展開していく大きな絵が見えてきた。このことにより,「『浅間節』を形づくっている音楽の要素」,「『浅間節』と生活?文化?伝統」,「3年C組の生徒と『浅間節』とを取り巻いている環境」,について生徒が働かせる見方や考え方を様々に表現していくことで生まれる生徒の問いの変容,そして,そのために必要な教師の支援が明らかになってきた。 教材188bet体育_188bet备用网址から見えてきた生徒の探究のサイクルを見通した探究的な学びのデザインが,単元を通して教師の支えとなった。発想をどんどん動きや言葉にしながら形にしていっている生徒の様子を見て,心のどこかで「もっと音楽と関連付けていかなければいけないのか」という思いに駆られながらも,「これが『遊び』なんだ」と捉え,一言出てしまいそうになる自分の気持ちに待ったをかけながら生徒を見守った。この学びの先にあるはずの何かを生徒とともに予感し,共に目指すことができた。 【事例②】省察が問いの質の変容を促し,自分の生き方にまで届く探究的な学びを実現する 単元名:「お客さんの心を動かせ!私たちのポップ!」(1年 国語) 生徒は,作り手(自分)と受け手(お客様)がもっている,言葉に対する印象の差に直面した。自分と受け手が抱く言葉の感じ方のズレに直面し,「自分のポップをさらに練り直し,お客様の心を動かすポップにしたい」という問いを立ち上げていく。売り上げ目標が達成できた商品のポップ,達成できなかった商品のポップの共通点,相違点を探したり,自分たちで改めてポップを見返したりしながら,対話を重ねていく生徒の姿があった。生徒は,辞書的な意味だけではなく,どう相手に伝わるかといった表現の印象や効果から言葉を見つめていく。自己評価や他者評価などの省察によって,「一つ一つの言葉を見つめ返し,表現を吟味したい」という問いを立ち上げ,言葉の見方?考え方を働かせていった。 自分の中に問いを立ち上げ,その問いの質を変容させながら,協働的に探究していく先に,一人ひとりの生き方や在り方に届く学びが構成されていく。つまり,子どもが自分の生き方や前提を問い直し,編み直していく姿や場面があった。そんな姿を目の当たりにしながら,教師自身も「共感を生む言葉とは」という問いに向かって,探究を重ね,教師自身の捉えも更新されていった。 【事例③】子どもの「思いや願い,問い」から始まる学びを支えようとする教師の構え 題材名:「廃材でRecycle!笑顔がつながる持続可能な社会づくり」(1年 総合) Y教諭は学級総合の立ち上げの際,「生徒がやりたいと思っていることをとことんできる時間が学級総合であると思っていた」と語っていた。実際にその学級では生徒のやりたいことから,9つのグループが生まれ,活動が始まっていった。生徒はそれぞれの活動にのめり込んでいくが,その一方で教師は「これが総合的な学習の時間なのか」という違和感に立ち止まる。「それぞれが自分のやりたいことをやりたいようにやっていくだけの3年間でいいのか」と。 「それが生徒の『思いや願い,問い』を大切にすることなのか」と迷いながらも,Y教諭が生徒に自分の違和感を伝えた際,その違和感への共感が,クラス全体に広がっていく。その中でY教諭は「生徒の根底には,『ただやりたいことをしたい』ではなく,自ら学びを求めて授業に参画したいという思いが内在している」ということ強く感じている。「生徒の『思いや願い,問い』から立ち上がる学び」とは,「子どもは誰もが有能な学び手である」という前提から出発し,子どもと教師が同じ方向を並び見ながら,体験や対話などを繰り返し,学びを構成していくことなのかもしれないと,Y教諭はその題材を振り返った。 - 8 -
元のページ ../index.html#12