5年次 実施報告書
35/57

‐31‐ 「遊び」を「学び」と捉えて,この学年において本当に大事にすべきは何なのか。意図があっての「遊び」を仕組む必要がある。「毛筆」という材,「毛筆」の発見,「毛筆」の発明,「毛筆」の特徴を,どのように文字の学習へとつなげていくのか。本時では「painting」もしくは「drawing」の段階にあった活動を,どのようにして「handwriting」の学習へといざなうか。このように考えると,現段階では未だ水書用筆を与えず,子どもたち自身の創造を受けた上での完成品として,もっと後の段階で水書用筆を渡す方が効果的であったかもしれない。自分たちの発見発明があって,初めて水書用筆に出会う。「遊び」から「学び」へ ― 教師の思考及び判断をふまえ,子どもたちにどのように働きかけるか。これからの課題である。 【事例②】単元名:「つくろう!オリジナルデザイン!」(小3年 かがく領域) 1)個に応じた探究がより豊かになるための授業デザイン 3年東組では学級の係活動の名称を○○係ではなく,○○会社と決め,子どもたちが社員となって学級のみんなの笑顔のために企画を考えて活動している。3年生になり少しずつ仲間を意識し,誰かのために動くことに喜びを感じているのだろうか,自分のための休み時間を学級の仲間ために使っている子もいる。子どもたちには,会社の仕事が「やらなければいけないもの」ではなく,「やりたくなっちゃうもの」として位置付いているようだ。3年東組の子どもたちは企画を考える中でよくアンケートを行っている。紙に質問を書いて配布し回収,そしてその結果をもとに企画をつくっている。たとえば,お笑い会社は「みんなでやりたい遊びを書いてください」と質問し,サッカーが多かったのでサッカーの企画を提案する。音楽会社であれば「流してほしい曲を教えてください」とアンケートを行い,一番人気の曲を流している。音楽会社のO児は,「これ調べるのに時間がかかるんだよね」と言いながらも,時間をかけて楽しそうに集めたアンケートの紙を,曲ごとに並べて集計している。また植物会社のY児は「教室にかざってほしい花を教えてください」と Google のClassroom の質問機能を使って全員にアンケートを実施し,回収したものを同じ会社のK児と一緒に集計した。Y児がデータを読み上げ,K児が正の字を書いて落ちが無いように調べていた。教師は,そんな子どもたちの「もっと知りたい,もっと調べたい」を支え,個に応じた探究が保障されるような授業をデザインした。2021年7月に行った「もっと知りたい!3東のこと」では,自分で知りたいテーマを決め出し,学級全員にアンケートを取り,棒グラフで表して学級の友達に紹介するというものである。教師は個に応じた探究がより豊かになっていくことを願い,あえて事前に棒グラフのかき方は指導せずに,ICT(Googleスプレッドシート)を活用して棒グラフを誰でも簡単に作成できるように支援した。 2)子どもの「見方?考え方」の広がりを受容する教師 ポスター会社のG児は,ポスタークイズをつくり正解した人には折り紙をプレゼントしている。そのこともあってか,G児は「好きな折り紙は何ですか?」のアンケートを行った。学級の子どもたち(36人)の好みが分かれ項目が27にもなっていた。授業の前半でのG児と教師のやり取りである。 教師:「(項目が)たくさんだね。」 F児:うなずき,「1,2,3,4,…,25,26,27」と正の字でまとめた項目を大きな声で数える。 教師:「それぜんぶ(グラフに)かきたいよね?」 F児:「うん!」と自信を持って答える。 教師:「うん。そうだよね!」 授業前,27項目になってしまい当然戸惑うであろうG児に対して教師は「動物,植物,乗り物,キャラクターなどでまとめてみるのはどうか?」と項目をまとめることを促す予定でいた。

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る