‐33‐ おく必要がある。T児は「みんなは今までに家で何個工作を作ったことがありますか?」とアンケートをとった。他の子どもたちが「好きな季節はなんですか?」「好きな花は何ですか?」など質的データを扱っているのに対し,T児は3学年で扱わない量的データのアンケートであった。教師は,いずれ扱う6学年での柱状グラフに役に立つことをイメージしていたので,T児のアンケート方法を切り捨てることはせずに,「項目を0~9個,10個~19個,…としてはどうか?」と階級を意識した発言で,T児の探究を支えることができた。 教師は,子どもが働かせている見方?考え方の広がりを受容するとともに,45分でのねらいに固執して思考?判断するのではなく,単元全体を(もしくはもっと先を見越して)俯瞰し,子どもの学びを捉えていくことが求められているのではないか。 (3)小学校高学年~働かせている見方?考え方が深まる【領域の教科化】~ 【事例①】単元名:「家族にぴったりの箸を贈ろう」(小5年 技術科) 1)技術感から技術観へと高めていく小中6年間の技術科 本学校園技術科では,「技術っておもしろい,楽しい,すばらしい,便利だ」という技術感を醸成した後,技術の見方?考え方である「事象を技術との関りの視点で捉え,社会からの要求?安全性?環境負荷や経済性に着目し技術を最適化していく」という技術観へと高めていくことを意図して授業実践に取り組んでいる。 2)技術感から技術観へと高めていく単元 5年東組では技術科の学習で鉛筆立ての製作に取り組んだ。教師は,本単元で2度の鉛筆立ての製作を位置付けた。1度目は技術感を醸成することをねらった製作。のこぎり引きや釘打ちのおもしろさや楽しさを味わい,鉛筆立てが完成する喜びを感じられることをねらった。2度目は技術観へと高めていくことをねらった製作。「家族に贈る鉛筆立て」をテーマとし,家族にとって最適な鉛筆立てを目指して製作する。相手を意識することで,「最適化」という技術科の見方?考え方(技術観)が働くことをねらった。2度の鉛筆立ての製作を通して,技術感を醸成し,技術観へと高めていくことを意図して単元を構想した。 簡単そうに見えたけど,すごく大変だった。手が痛くなったりしてとても疲れたけど,のこぎりを初めて使ったから面白かった。きれいに切れたのがうれしかった。次回はもっとたくさん切りたいと思った。 切る時にコツを使うとけっこう力がなくても切ることができた。でも,“まっすぐ”ということが大変で,どうしてもだんだんななめになってきてしまった。今度はちゃんと“まっすぐ”に切れている人に聞いて,まっすぐきれいに切りたい。 初めて両刃のこぎりで木材を切った授業。子どもたちは教師から示されたコツを意識しながら,1cm幅に何度も何度も木材を切っていった。振り返りから,のこぎりで木材を切る感触を味わい,そのおもしろさや難しさを感じ,もっとこうしたいという願いが生まれているのが見受けられた。技術感が醸成されてきていると捉えられた。 今まで「木を切ってみよう」というふうに,木を切ることになれることしかやったことがなかったけれど,今回は「鉛筆立てを作ろう」というふうに初めて自分の作品を作った。難しい事もあって,特に今までやったことなかった切った木をくっつけるという部分が難しかった。どっちの向きからくっつければ良いのか,くっつけるのにはここはボンドでやったほうが良いのかそれとも,釘が良いのか,色々考えた。でも,だんだん自分でこうやって考えてものを作ることが楽しくなってきた。今作った鉛筆立ては,少し斜めになっていたり納得行かないとこもあるけど,自分オリジナルの作品ができて,もっと技術やものづくりが好きになった。 1度目の鉛筆立ての製作を通して,子どもたちは製作工程1つ1つのおもしろさや楽しさを
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