‐34‐ 味わい,製品を完成させる喜びを味わうことができたようだった。1度目の製作のねらいを達成できたと判断できた。 3)製作者にユーザーの視点が加えることで深まる見方?考え方を意図した授業 1度目の鉛筆立ての製作を終え,子どもたちに技術感が醸成されてきていることが見て取れた。それは,製作者としてものづくりに取り組むことで感じられた技術のおもしろさや楽しさである。2度目の製作では,1度目の製作を活かして「家族に贈る鉛筆立て」を製作する。相手にとって最適な鉛筆立てを設計し製作するためには,製作者の視点だけでなくユーザーの視点からも製品を見る力が必要になる。 そこで,大きさはほぼ同じだが価格が異なる2種類の鉛筆立てから,その価格が違う理由を考察する授業を実践した。価格が違うの理由はぱっと鉛筆立てを見ただけではわからない。価格の違いを考えるために,材料費や加工の技術等の製作者側から見る鉛筆立ての価値と,機能性や肌触り等のユーザー側から見る鉛筆立ての価値を合わせて比較することになる。製作者としてものづくりの世界の面白さを味わってきた子どもたちが,ユーザーとしてものづくりの世界をあらためて見つめることで,技術の見方?考え方を深めることを意図した授業である。 N児は2種類の鉛筆立てを比較し,表にまとめていた。N児が見出した比較のポイントは,「重さ」「木の向き」「表面」「仕切り」であった。N児は安い鉛筆立てに対して,「軽い」「木の向きは横向き。もようがないのはなぜ?」「表面がちょっとはげてる?すぐわれるかも」「しきりがあつい?いくつか重なってる?(木が)」「すぐよごれる。がらはシール。すぐはがれてしまう。」と分析した。N児は高い鉛筆立てに対して,「重い」「木の向きはたて」「表面がなめらか」「しきりがうすい」「底がなんかふわふわついてる。」と分析した。 N児の分析を捉えた時,N児は主に製作者の視点で価格を考えていると教師は考えた。「重さ」「木の向き」「仕切り」のポイントは,材料費や加工法から見出したポイントだと考えられたからだ。教師は,N児の視点にユーザーを加えるため,「表面」のポイントに着目した。「表面」についてN児に問うと,N児は「なんか,気持ちよくないじゃん。はげてだんだんとれたり。」と答えた。このN児の答えから,N児が無意識にユーザーの視点にも立ってきていると教師は考えた。そこで教師は「Nさんが買うとしたら,やっぱなめらか要素ほしい?」と問いかけた。ユーザーの視点を確かにするための問いかけだった。N児は「うん。」と答えた。 教師は,N児への支援と同様に,子どもたちの気づきや考察に対し,ユーザーの視点に立っているものを取り上げ,問い返し,価値づけていった。そのような支援によって,子どもたちは意識的にユーザーの視点で鉛筆立てを考察していった。 材料やコストなどの作る人目線,値段や手ざわりなどの買う人目線に分けると面白かった。 使う人(使ってほしい人)がちがうから。目的によって良い部分と悪い部分がでてくる。 製作者だけでなくユーザーの視点への気づき,ユーザーの視点だからこそ見えてくる鉛筆立ての特徴,さらに,高いから良い製品で安いから良くない製品ということではなく,それぞれのユーザーに最適な製品づくりがされているということ。授業の振り返りから,子どもたちの技術の見方?考え方(技術観)の深まりを捉えることができた。 4)「3つの力」を発揮している子どもを支え,ねらいに迫れるよう価値づける教師 2種類の鉛筆立てに出会うことで,子どもたちに「どうしてこんなに価格が違うのか」と問いが生まれた。子どもたちは鉛筆立てに触れ,観察し,叩き,嗅ぎ,重さを測り,水を入れて比較し,考察を記し,友達と語りあった。子どもたちは問いが生まれたからこそ,このように「3つの力」を発揮し,問いの解決に向かっていったのだろう。 教師は子どもたちに問いが生まれることを予測して2種類の鉛筆立てとの出会いを作ってい
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