‐38‐ 合って,〇〇のような対話をしているときには,音楽の見方?考え方が働いている」と,生徒の探究を見届けたり,「次は,このような思いや願いや問いに変容していくだろう」と,生徒の姿を思い描いたりしながら支援していくことができた。また,生徒の探究がうまく流れていない時には,今その生徒にはどのような支援が必要か,どのような面が弱くて,どのような面が生徒の探究の流れを阻んでいるのかを考えるためにも,生徒の姿を書き出した単元デザインが教師の支えとなり,不足していた音楽を形づくっている要素や教師の支援を補うことができた。 3)探究的な学びへの挑戦を終えて 今までも,生徒は,楽曲に対して「自分の感じ」をいろいろな角度からもつことはできている。しかし教師は,「その感じを基に表現を練り上げるために,とことん材と向き合う時間や学習の展開を保証してあげることができない」という反省を常に抱いてきた。探究的な授業にしようと努めているが「教師自身の都合で,方向性を何となく絞り込み,個々の感じを蔑ろにしてしまっているのではないか」と,結局単線的(1cycle)な追究にとどまり,スパイラルな探究にできていないというもどかしさをもっていた。 一方で,改善に向けた予感がなかったわけではない。学級総合のように,問いが生まれ,その質が変容し,友と協働しながら探究することで得られる活動の充実感や仲間のよさ,体験から得られる実感やそれに基づく活動を掘り下げていった先で,個々の探究がつながりみんなの探究となった一体感や喜びを,教師は3年間かけて体に刻んできた。だからこそ,音楽の学習でもそうした学びを生徒に味わわせてあげたい,そんな思いで今回の単元を構想し,実践した。 活き活きと目の前で声を出したり動いたり,音で遊んだりする姿。今までの音楽学習では見られなかった生徒の心からの笑顔や,発想をどんどん動きや言葉にしながら形にしていっている生徒の様子を見て,「こういう生徒たちの探索の先にこそ,主体的で探究的な学びがあるのではないか」と考えが変わってきた。心のどこかで「もっと音楽と関連付けていかなければいけないのか」という思いに駆られながらも,「これが『遊び』なんだ」と捉え,一言出てしまいそうになる自分の気持ちに待ったをかけながら生徒を見守った。それは今振り返れば,この学びの先にあるはずの何かを生徒とともに予感し,共に目指していこうとしていたのだろうと思う。 【事例②】省察が問いの質の変容を促し,自分の生き方にまで届く探究的な学びを実現する 単元名:「お客さんの心を動かせ!私たちのポップ!」(1年 国語) 1)自分が前提としていることとの「ズレ」が,生徒を立ち止まらせ,省察場面を生む。その省察が,生徒の問いを立ち上げ,問いの質を変容させていく 前単元では,松本市内にある雑貨店「THEDAY」と連携しながら,商品のポップ作りを行った。自分が感じた商品の魅力を,自分が面白さを感じる表現でポップに仕上げていった生徒たち。自分たちがつくったポップが実際の店内に一定期間掲示された。 本単元は「商品売り上げ達成状況表」や「THEDAY中田さんの講評」を聞くことから始まった。その中で生徒は,作り手(自分)と受け手(お客様)の印象の差に直面した。自分と受け手が抱く言葉の感じ方のズレに直面し,「自分のポップをさらに練り直し,お客様の心を動かすポップにしたい」という問いを立ち上げていく。 大澤さんのグループが作ったポップ
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