5年次 実施報告書
43/57

発言者 教師01 売り上げ「0」という結果を聞いたとき,「え?なんでなの?」って言ってたと思うんだけど,そのときの思いをもっと詳しく教えてほしいと思って。 大澤01 うーん。自分達が作ったポップは,100点といっていいほど,満足していたのに,それが「0」っていうことを知って,悲しかったし,その理由を知りたいなって思って。あと,お客様の声も私達のグループにはなくて。(中略)いいと思っていても,私達のポップはお客様の心を動かしていないなって思って。 教師02 そうか,中田さんの話を聞いてそんなことを思ってたんだ。じゃ,どうすればお客さんの心を動かすポップになったのかな? 大澤02 (沈黙)まだわかんないけど,グループでもう一度見直してみたいし,話し合いたいし,もう一度作り直して,考えてみたい。 生徒は,自分たちがつくったポップを真剣に見直し始めた。売り上げ目標が達成できた商品のポップ,達成できなかった商品のポップの共通点,相違点を探したり,自分たちで改めてポップを見返したりしながら,対話を重ねていく。生徒も教師も自分の感じたことや考えたことを差し出しあい,「より心を動かすポップ」に必要な「意外性」,「言葉の組み合わせの面白さ」,「機能面の紹介」「具体的な生活場面の想起」という4つの観点を見出していく。そして,特に自分たちのポップに不十分だった「『具体的な生活場面の想起』を起こすポップとはどんなものだろう」という問いに向かって試行錯誤を重ねていった。 単元も終盤に差し掛かり,大澤さんは,自分が作ったキャッチコピーが,お客様(読み手)の心を動かすキャッチコピーになっているのかということについて疑問を抱いていた。そこで教師は, 作ったキャッチコピーに対して,観点を明確にしながら他者からの評価をもらう場面を設定することで,自分が表現しようとした場面と,相手が想起した場面の整合やズレの内実を確認していくことができるようにした。大澤さんは,自己評価と他者評価を比較していく中で感じた疑問や思いをぶつけていった。 発言者 大澤03 (自己評価と他者評価を比較しながら)なんで,表現のところが☆一つなんですか? 三石01 なんかくどくない?「ちょっとした小さな小さな幸せで」って。 大澤04 最初は「ちょっとした幸せ」だった…。(数秒黙る) 三石02 「ちょっとした,小さな小さな」だと特別感が強すぎて,日常的に使うものって感じがあまりしなくなるな。 大澤05 あー。たしかに。そうですよね。ないほうがいいかもしれない。 「小さな」を反復することで,「日常にあるちょっとした幸せ」を表現しようとした大澤さんは,それがかえって「非日常の特別感を感じる幸せ」に捉えられることもあるという事実に直面する。自己評価と他者の批評から,一つの言葉や表現にも様々な捉え方がある,という言葉の奥深さを実感し,他の言葉についてももう一度見返し,言葉の吟味をしたいと大澤さんは考えていった。次時「似た言葉と入れ替えたポップを比べてみたら印象がどう変わるだろうか」と類義語辞典を用いて,意味や印象や効果の違いについて考えていった。 発言者 大澤06 先生,いろんな言葉を比較してみて,最後,「ちょっとした」と「ささやかな」という言葉で悩んだけど,「ちょっとした」にしました。 教師 どうして「ちょっとした」にしたの? 大澤07 ここ(辞典)に,「ささやかな贈り物」「ささやかなもてなし」ってあるように,なんか特別感が強い気がして。「ちょっとした」の方が,日常でよく使う言葉だし,「ちょっとした発言内容 発言内容 発言内容 ‐39‐

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る