- 24 - 【事例①】年少たんぽぽ組 9月「どこに箱をつけようかな」(車作り遊び) ⅰ)これまでのT児の姿をもとにした環境構成 年少たんぽぽ組では,多くの子どもたちが空き箱やガムテープ等を使い,工作遊びを楽しんでいた。T児も,空き箱の車を作って走らせるのが大好きであった。 T児は,6月頃から空き箱をセロハンテープで貼り合わせて遊ぶ姿がよく見られるようになり,作る度に「見て,これくっつけたの」と笑顔で保育者の所へ持ってきて見せていた。夏休み明けには,同じ形の空き箱をセロハンテープでつなぎ,長い電車を作るというように,素材の形を見て,選びながら車を作る姿も見られ始めた。 そこで,このように空き箱で車を作って遊んできたT児が,素材の形を選び,組み合わせながら,自分の作りたい車を存分に作ることのできるように環境を構成した。 ⅱ)8月26日(金)素材を組み合わせながら車を作って遊ぶT児の姿から T児は朝の支度を終えると真っ先に誰もいない工作机へ向かい,牛乳パックにタイヤをつけて,大好きな車作りを始めた。素材かごから牛乳パックよりも大きな箱を手に取って見つめると,すぐにそれを素材かごに戻した。その姿を見た保育者は,“どうして箱をとったり戻したりしているのだろう”と不思議に思い,T児の「やりたい」を捉えようと,遊ぶ様子を見守った。すると,T児は牛乳パックよりも幅の少し小さい薬の箱を取ると,牛乳パックの車の上にガムテープで貼り付けた。その様子を見て保育者は,“実際の車は上の方が小さくなるから,牛乳パックの車の幅からはみ出ないように,小さい箱を使って貼り合わせたいのかな”と,T児の思いを捉えた。その後T児は,素材かごからヨーグルトのカップを手に取って車にあてた後,再び素材かごに戻したり,先ほどと同じ薬の箱を手に取って,牛乳パックの車に貼り付けたりした。 これらのことから保育者は,“T児はきっと素材の様々な形を見て,組み合わせを試しながら,T児の車のイメージに合う形の箱を使って作っていきたいのだな”と捉えた。 ⅲ)T児から読み取った「やりたい」をもとに援助を行う保育者 T児は,その後も素材の形などを確かめながら,車のイメージに合う素材を組み合わせて車作りを楽しんでいくのではないかと考えた。そこで保育者は,形の違う様々な種類の空き箱やヨーグルトカップ,トイレットペーパー芯などを十分に使うことができるように用意することにした。 すると,T児は素材を組み合わせながら,電車や消防車など,様々な乗り物を作って遊んでいった。そうやって様々な形の箱を組み合わせて車を作っていくうちに,牛乳パックの両端とトイレットペーパー芯をガムテープで貼り合わせたり,折り紙をトイレットペーパー芯に巻いて好きな黄色にしたりするようになった。今までとは違う形の組み合わせで車を作ったり,色にも興味をもち始めたりするなど,これまでに無い遊びの広がりを見せ始めた。また,車をまっすぐ走らせようと,車に貼り付けた空き箱をはがしたり,「何付けたらいいのかな」とつぶやきながら素材を選び,車の前方に,ストロー,竹串,ペットボトルキャップでできたタイヤを付けることで,後方のタイヤとバランスがとれて安定することに気付いたりしていた。このように,素材を選ぶだけでなく,素材を貼り付ける位置も工夫し始める姿が見られるようになっていった。 ⅳ)T児の育ちを見つめて T児は形の違う複数の素材を組み合わせながら車を作ることに加えて,車が思うように走らない時には,“二つも箱がついているから重いのかな”と思って,一度付けた空き箱をはがすとい2 本学校園の事例と成果ああああああああああああああああああああああああああ (1)幼稚園~【遊び】目の前の子どもの「やりたい」を捉え,支え続ける保育者の有様~ <カレーの箱を素材かごに戻すT児〉
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