附属松本中6年次 実施報告書
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- 31 - で,生徒が運動への関わりに親しみをもち,探究的に学ぶことで「できそうな私」から「できてきた私」,そして「できてくる私」を自覚できるような授業を構想した。 まず,188bet体育_188bet备用网址グループで,生徒が「できそうな私」から「できてきた私」,そして「できてくる私」を実感するイメージを明確にしようと「生徒の実態,興味や関心」,「単元で育成すべき資質?能力」,「アルティメットの特性」の三つの観点から教材188bet体育_188bet备用网址に取り組んだ。学習指導要領で育成すべき資質?能力を確認したうえで,生徒の実態や生徒の学びの姿を語り合ったり,教師自身がアルティメットのディスクを投げて遊び,感じたことを出し合ったり,生徒がどのように体育の見方?考え方を働かせて資質?能力を育んでいくのかを検討したりすることで,生徒の姿を具体的に思い描きながら,必要とされる支援を構想した。さらに,生徒が自らの学びを自覚できるようにするために,練習や試合を撮影し,自分たちの動きを動画で確認できるようにしたり,活動の後に振り返りの時間を確保し,生徒同士でそれぞれの動きのよさを共有できたりするようにした。 ⅱ)ゴール型球技のもつ中心的な楽しさ(特性?価値?魅力)に触れながら,「できてくる私」を感じていったOさん 最初の授業で,Oさんは,アルティメットで使用するディスクに触れ,まっすぐ投げるために投げ方を試したり,仲間とパスをしたりしながら,アルティメットという競技に対する期待感を高めていた。しかし,試合形式の練習になると,どう動いたらよいか分からず,悩み,立ち止まる姿が見られた。どう動けばよいのか分からないという課題に直面したOさんは,その後,どうやって動けばパスをつなぐことができるのだろうという問いをもち,パスがつながるための自分の課題やチームの課題を見付け,課題の解決に向けて技能を高めようと練習したり,班で作戦を話し合ったりした。アルティメットなどのゴール型競技は,一瞬一瞬で,状況が変わってしまい,後で再現することが難しい。そこで,教師は,「チームで作戦を考えたり,協力したりする楽しさ」を感じてほしいと考え,練習や試合を撮影し,自分たちの動きを動画で確認できるようにしたり,活動の後に振り返りの時間を確保し,生徒同士でそれぞれの動きのよさを共有できたりするようにした。空いた空間に走るOさんの動きのよさを認めてくれる仲間の声がけや,自らの動きを映像で確認することで,Oさんは「できてきた私」を実感し,「もっとチームのために動きたい」という願いをもち試合に臨むことができるようになっていった。試合後の感想にOさんは「アルティメットクラスマッチで,チームが勝てるように自分なりに考えて行動することができた。みんなでディスクをつないでゴールできると嬉しい」と記した。友の声掛けや,映像で自己の動きの成長を自覚したことにより,Oさんは「できてくる私」やアルティメットの楽しさや喜びを感じることができたと考えられる。 ⅲ)学びに寄り添いながら,支援を考えることで,生徒の探究的な学びを支える教師 アルティメットの授業では,普段,自分の感情を表に出さないOさんが,練習や試合を通して,仲間から「ナイス!」と声を掛けられ,嬉しそうな笑顔を浮かべていた。授業の振り返りの記述内容が,単元序盤では,技能的なことや自分ができないことに対する記述が多かったが,授業が進むにつれ,自分ができたことやチームの中での役割についての記述へと変化していった。その姿から,Oさんが,ディスクを「投げる楽しさ?キャッチする楽しさ」から,「試合の中で味方とパスを成功させる楽しさ,相手のディスクを防ぐ楽しさ」,そして,「チームで作戦を考えたり,協力したりする楽しさ」へと発展させながら,アルティメットやゴール型球技のもつ中心的な楽しさ(特性?価値?魅力)を感じることができたのではないかと考えている。 自らの実践を振り返ると,「できるか,できないか」という技能の習得のみに焦点を当てて,教師が一方的に指導してきたように思う。運動を苦手とするOさんが,初めてディスクを触ったとき,投げた時,キャッチしたときに感じた「楽しそう」「できたら嬉しい」「やってみたい」という思いや願いを大切にしたこと,そして,Oさんが,習得?活用?探究という学びの過程の中で,

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