サービススキーム。車を手軽に借りたい人と、個人で車を貸し利用の有無を問わず発生する初期費用や月額基本料金も無料。藤森社長は「利用料金の点でも手軽に利用できるようにしている」と胸を張ります。現在、長野市、松本市、上田市において、カーシェア可能な車が計20台登録され、運用実績も順調に上がっているそう。2023年8月に信州大学発スタートアップに認定されたことによる信用の向上などもあって車両提供者が増加しており、3市以外への進出も企図しているそうです。PROFILE信州大学繊維学部卒業後、東京のIT/マーケティング会社に就職し、1年後に独立。2022年12月 新たなカーシェアリングサービス「OURCAR」を提供する株式会社TRILL.創業。2023年8月、信州大学発スタートアップに認定される。違いないという気持ちが強まっていきました」もうひとつ、大学2年終了時に休学し、半年間アフリカを旅した経験もOURCARを提供するきっかけになっているそうです。「明日、自分の身に何が起こるか分からないアフリカで生活し、いま経験して感じていることこそが一番大切なのだと気づかされました。車がないだけで経験の数が変わるなら、車を用意することで経験の幅も数も増やせるのではないかと思ったのです」そのために最優先で取り組んでいるのは、OURCARでカーシェアできる車両の拡大。まずは長野県内の松本市、長野市、上田市及び地方都市を中心に、積極的に登録車両の募集を行っています。提供車両が増えれば、ユーザーが柔軟に利用できる保険の仕組みや利用までの距離など、さらなるユーザーメリットも付与できる」と言います。中長期の目標のひとつとして、ライドシェアへの参画も掲げています。カーシェアが車を運転して利用したい人と空いている車をマッチングするサービスであるのに対し、ライドシェアはドライバーと乗車したい人をマッチングするサービスです。今年4月に施行された働き方改革関連法によるタクシードライバーの不足を受け、一部の大都市でライドシェアの運用がスタートしており、藤森社長はOURCARの新たなサービどの場所でどんな車が選べるのかが一目瞭然なOURCARの予約サイト。地図内をよく見ると、長野市の住宅街の中に点在しているのが分かります。2023年度の信州アクセラレーションプログラム採択事業者。中央が藤森社長で、右は株式会社ネックレス 滝沢直美 代表取締役、左は株式会社Swell 青波美智 代表取締役。スとしてそれを全国に広げたいと考えています。「OURCAR利用者同士やマイカーに乗っている人と車を持っていない人同士がライドシェアをできるようになります。」と期待を込めて話します。「シェアリングとは分け合うこと。そのためには人と人の助け合いが必要です。OURCARによって利用者が車のある幸せを享受できるだけでなく、相互扶助の精神が根差してくれればと願っています」。そう話す藤森社長が思い描く車を通じた人を幸せにするシェアリングサービスの形。実現が楽しみです。10株式会社TRILL. 代表取締役社長(ふじもり けんご)信大時代の経験がサービス開発のきっかけOURCAR提供のきっかけのひとつが、信州大学での学生時代の経験です。藤森社長は大阪出身。公共交通が発達しており、車がなくても不便を感じることはありませんでした。ところが信州大学に入学して、車がないと行きたいところに行けないという現実を目の当たりにし愕然としたと言います。「買い物ひとつとっても商業施設に行くことができない。参加したかったイベントに行けないこともありました。車がないというだけで、経験格差を強く感じました。そして、いつしか私同様に楽しみを失っている人が大勢いるに点から線、そして面へサービスを拡大OURCARが目指す最終形は、日本全国にカーステーションが網羅され、大都市でも地方でも誰もがすぐに車を使えるようになること。例えるなら、知らない駅に降り立ち、改札口の目の前にあるOURCARに乗って思い出づくりに旅立てるような世界の実現だそうです。現在は長野県内の3市のみと点のサービスですが、藤森社長は「点を“線”に変え、さらに線の周囲に広げて“面”にして、全国に広げていきたい」と話します。藤森 研伍さん
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