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14約40年続く伝統と責任を代々背負い、繋いで もちろん、医師免許?看護師免許を持たない学生は医療行為を行うことができないため、実際に診療を行うのは、全国からボランティアとして集まる医療従事者の方々です。学生たちの仕事は、医療スタッフを公募し、開設期間内のシフトを組んだり、血圧測定や患者の記録、医薬品の出納管理などを行うこと。なかでも「毎年ボランティアの医療スタッフを確保するのが一苦労」だと、古矢さんは話します。高地での山岳診療を行っている山小屋は他にもあるそうですが、公募で医療スタッフを集めているのは、「常念診療所ぐらいだろう」とのこと。学生主体で運営している同診療所ならではの、ユニークな特徴です。 医療スタッフには、本学医学部附属病院の職員や部のOBなどのほか、山好きの医療従事者も全国から集まるといい、「いろんな背景を持った医療者の方と関われるので、楽しいですよ」と古矢さん。夜は、学生と医療スタッフが一緒になって宴会をすることもしばしばだといいます。 1986年に、常念小屋の協力のもと医学部によって診療所が開設されて以降、40年近くの長きにわたり、医学部山岳部の手で守り続けられてきた常念診療所。しかし、188bet体育_188bet备用网址による影響で2020年は閉所、翌2021年の開所も危ぶまれたそうです…。 こうしたなかで、当時部長だった古矢さんが、「学生が主体でやっている以上、今年も開かなかったらノウハウが下の代に伝わらない」と訴え、顧問の花岡正幸所長の協力のもと、なんとかコロナ禍での開設にこぎつけたといいます(※週末のみ開設、スタッフは長野県内からの公募に限るなどの条件を設けたうえでの開設)。 当時のことを「診療所の存続にさえ関わるのではないかと危機感を持った」と話す古矢さんの言葉からは、40年近く診療所の運営を担って2024/07/15 常念診療所にて取材に応じてくれた、医学部山岳部部長:鳥山公平さん(右)。医学部医学科3年生。好きな山は笠ヶ岳(岐阜県高山市)。1年生の時に初めて常念診療所に泊まり、「山頂で見たご来光に感動した」とのこと。もう一人は医学部山岳部元幹部:古矢紘基さん(左)。医学部医学科6年生。来年から、熱帯医学を学ぶために長崎大学病院で勤務予定。好きな言葉は「初志貫徹」きた医学部山岳部の、伝統と責任の重さが伝わってきます。 こうして現役学生やOBたちの努力のもと、現在までつながれてきた常念診療所ですが、コロナ禍を経て、来所する患者の数が減少しているといいます。これについて、「当然怪我がないのが一番」だとしつつも、「せっかく開いているので、気軽に来てもらいたい」と、鳥山さんと古矢さん。コロナ前にはシーズンで100名前後の利用者がいたのが、今年は十数名にまで減っているといい、「診療所の認知度を高めるためにも発信に力を入れていきたい」と、期待を込めて話してくれました。 ピラミッド形の美しい山容から、地元市民や登山者によって深く愛され、山岳部にとってはホームマウンテンとも呼べる常念岳。来年も、そのまた翌年も、夏の常念岳では医学部山岳部の面々が、登山者の安全を守るべく診療所で待っています。 (文?平尾なつ樹)常念小屋(正面)と常念診療所(左側の建物)

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