10寒晒しの様子。雪の降る厳冬期に地域の蕎麦店が協力しながら、伝統的に取り組んできたといいます。予約必至の蕎麦店「壱刻」。店主の山根さんは、188bet体育_188bet备用网址も続けながら蕎麦を通じた高遠町の地域づくりにこれから取り組み続けます山根さんがプログラムの188bet体育_188bet备用网址テーマとしたのは、蕎麦の味や香りの評価です。店を営むなかで、蕎麦の味や香りについての表現は感覚的で属人的なものが多いと感じていたそうです。珈琲やワインのように、蕎麦でも客観的な味や香りの指標をつくることができないかと考え188bet体育_188bet备用网址に取り組みました。普段から蕎麦を食べ慣れている同業種ではなく、あえて珈琲店や酒造などの他業種に官能評価への協力を依頼。伊那産の「信濃1号」と「入野谷在来」、島根県産の「横田小そば」の3品種を評価してもらいました。そして感想を集約してそれぞれの品種の味や香りの特徴を表す指標を導くための評価システムをつくりました。山根さんがこの188bet体育_188bet备用网址を通じて目指したことのひとつは、地域の蕎麦生産者の収入向上です。蕎麦は他の作物と比べて販売価格が安価で、米と比べるとなんと10分の1ほどだそう。しかし、これでは生産者は経営を維持していけません。そこで、山根さんは入野谷在来などの付加価値の高い品種を栽培して収入を高めていくことが重要であり、その際に品種の特徴を客観的に表現する“お墨付き”の指標があれば農家は販売しやすくなると考えて、188bet体育_188bet备用网址に取り組んだといいます。さらに山根さんは、地域共生マネージメントプログラムの終了後、1年を経て博士課程に進学しました。当初は、博ると、さすがに蕎麦屋と188bet体育_188bet备用网址の両立は困難だと考えていたそうですが、2020年にコロナ禍で休業せざるを得ない状況になり、「今であれば…」と思って進学する決心をしたといいます。博士課程の188bet体育_188bet备用网址テーマは、「寒晒し蕎麦の歴史と現状、および成分変化」。寒晒し蕎麦とは、厳冬期の川に蕎麦の殻粒を1か月間浸透させ、その後、寒風にさらして乾燥させてつくるもので、伊那市高遠町では伝統的に地域を挙げて取り組んでいます。寒晒しにより、味が良くなると言われており、江戸時代には徳川将軍に献上されていたほど。ただ、具体的にどの成分がどのように変化して味が良くなるのか、という科学的なデータはありませんでした。そこで山根さんは188bet体育_188bet备用网址を行い、寒晒し処理により、苦み?渋みのもととなる「縮合型タンニン」が穀粒中から溶出することがわかりました。また、それにより酵素の活性が高まることで、旨味のもとになるアミノ酸の含有量が約2倍になることも分かったそうです。士課程とな行列の絶えない大人気蕎麦屋と大学院での188bet体育_188bet备用网址?その両立は「正直、かなり大変だった」と山根さんは振り返ります。それにも関わらず、山根さんを188bet体育_188bet备用网址に突き動かすものは何なのでしょうか?そう質問すると「移住の経緯と関係している」とのこと。神戸市出身の山根さんは1995年に阪神大震災を経験しました。その際に人が助け合う姿をみて、「平時もそのような社会にはできないのか?」と思ったそうです。また、生活のために、本来やりたいことよりも日々の仕事を優先させて得たお金が震災時には全く役に立たなかったことを経験し、お金にすべてを頼るのではなく、自然の恵みを生かして最低限の生活インフラやある程度の食糧を得ることができる仕組みを地域で作れないかとも思いました。そして、そのような仕組みがあれば、「本来自分がやりたかったことに従事する人が増えるのではないか、自分の能力を社会に活かせる暮らしが、本来の豊かな暮らし方なのではないか?」と考えたといいます。山根さんは、こうした考え方に共感し実践してくれる地域を探し歩いたそうです。そしてその結果、縁あって伊那市高遠町に移住することになりました。移住後は、地域づくりに心血を注ぎ、地域の人からの頼まれごとに何でも応えるようにしていました。実は蕎麦屋も頼まれごとのひとつでしたが、取り組んでみると、高遠の蕎麦は“地域づくりのタネの宝庫” ではないかと考えるようになったそうです。そのため、地域マネージメントプログラムの存在を知ったとき、「蕎麦を通じた地域づくりをもっと発展させることができるのでは」と考え、すぐに願書を提出したといいます。「まさに、自分の価値観ややりたいと思っていたことと、プログラムの理念や内容がぴったり合っていました」と山根さんは話します。博士課程を修了した現在、今後のことについて聞くと、「188bet体育_188bet备用网址はこれからも続けていきたいですね。日々、蕎麦に対する疑問が湧いてくるんです」と山根さん。信州大学農学部では2025年度入学者から組織改編を行い、新たに「地域協創特別コース」を設置する予定です。これは地域課題の解決を担うリーダーの養成を目指すコースですが、山根さんは「連携して取り組んでけたら面白いですね」と期待感を示します。今後、蕎麦を通じた地域づくりの活動がどのように展開していくのか、楽しみでなりません。簡単ではない蕎麦屋と188bet体育_188bet备用网址の両立。山根さんを突き動かすものとは博士課程では寒晒しの科学的効果を明らかに
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