信大NOW149号
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この絵の降水確率は何%? はせべあい培った志を胸に、社会で活躍する素敵な大人たち11古今東西の名画やアニメ、漫画といった作品を、気象の観点から読み解くという新たなジャンルを長谷部さんは切り開いています。面白いと思ったことを伝えていきたいです」そう話すのは、信州大学教育学部卒業生で、気象予報士の長谷部愛さんです。長谷部さんは、気象情報会社のウェザーマップに所属し、主にTBSラジオの気象キャスターとして活躍しています。気象キャスターというと、テレビやラジオ番組で天気予報を淡々と伝える様子をイメージしますが、長谷部さんの場合はちょっと違います。きめ細かな解説やアドバイスを行います。例えば、雨天の日に「今日は雨具が必要です」とだけ伝えるのではなく、降水量や降り出すタイミングを考慮して、長傘なのか、折りたたみ傘なのか、レインコートなのかまで細かく伝えるようにしているそうです。また、特に力を入れて取り組んでいるのが、防災に関わる情報発信だといいます。昨今、地球温暖化により、大雨や猛暑などの気象災害が起きて社会問題化しています。そのなかで、気象災害の予報だけでなく、発生した際に「どのような行動をとったらよいのか?」といったアドバイスはリスナーにとって重要だそうで、そのニーズに応える長豪雨、猛暑…災害級の異常気象で重要性が増す気象予報の仕事「気象情報を通じて、自分が大切だとか、志を持っていきいきと活躍する信大同窓生を描くシリーズの第10回は、株式会社ウェザーマップ所属の気象予報士 長谷部愛さん(教育学部卒業生)をご紹介します。長谷部さんは、主にTBSラジオの気象キャスターとして活躍されていますが、防災の視点を取り入れた“ひと味違う”気象情報が注目を集めています。さらに最近は、モネやフェルメールといった絵画や浮世絵などの作品を気候変動などの気象の観点から読み解くという新たな分野を開拓し、大学教員や書籍執筆、講演活動と活躍の場を広げています。東京?赤坂のウェザーマップのオフィスを訪ね、キャスターや大学教員を通じてどのように気象に関わる仕事に向き合っているのか、また気象予報士を目指すことになった経緯などについて、お話しをお聞きしました。(文?佐々木 政史)谷部さんのきめ細かな解説やアドバイスには反響がとても大きいそうです。例えば、2019年の房総半島台風が去った後、長谷部さんが新聞を読んでいると、一般投稿欄のある記事が目にとまったそうです。「ラジオで気象キャスターの長谷部さんの情報がきめ細かく、注意すべきことを教えてくれた。大切なメッセージを伝える役割を十分に果たしていたと思う。ありがとう」というものでした。その記事を読んで長谷部さんは「じーんと来て、人の役に立つことができて本当によかったなと思いました」と話します。こうした一歩踏み込んだ気象情報に取り組むきっかけは、気象キャスターになりたての頃にあったといいます。山梨県甲府市で1mを超える大雪が降りました。長谷部さんはラジオでその情報を伝えましたが、その被害の大きさにショックで立ち直れないくらいで、「少しでも被害が大きくならないように、もっと伝えられることがあったのではないか…」と後悔の念に駆られたそうです。これをきっかけに、気象災害が懸念される際には、単に気象予報を伝えるだけでなく、どのような対策を取ればよいのかという、“情報の出口”を伝えることが大切だと考えました。それで、勉強をして防災士の資格をとり、専門的なアドバイスを行うようにしているといいます。株式会社ウェザーマップ chapter.10気象予報士災害への対応、アートの読み解き…クロスオーバーな活動を続ける気象予報士さん信大同窓生の流儀長谷部 愛教育学部数学科卒業生

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