122024年2月に出版した『天気でよみとく名画 フェルメールのち浮世絵、ときどきマンガ』(中央公論新社)は、お馴染みの作品でも、あっと驚く発見をもたらしてくれます。長谷部愛さん PROFILE1981年8月、神奈川県藤沢市生まれ。2005年、信州大学 教育学部数学科卒業。各地のテレビ局?ラジオ局でキャスター、ディレクター業を経験するなかで、2012年に気象予報士資格を取得。その後、ラジオを中心に気象情報を伝えている。また、2018年からは東京造形大学で非常勤講師を務める傍ら「天気とアート」の188bet体育_188bet备用网址も行う。最近は執筆や講演活動などにも積極的に取り組んでいる。著書に『天気でよみとく名画 フェルメールのち浮世絵、ときどきマンガ』(中央公論新社)がある。2024年10月からは天気という視点から漫画やアニメを語る音声番組「天タメPodcast」を配信している。ウェザーマップの会議室の書棚には、気象関連の本がびっしり。なかなかお聞きする機会のない気象キャスターのお仕事の内容や、気象を切り口にしたアートの読み解きに、思わず前のめりになる取材陣。活躍は気象キャスターにとどまらず、2018年からは東京造形大学の非常勤講師も務めています。一見、アートと気象は結び付かないように思えますが、実は画家の表現活動と密接な関係にあり、そのことを長谷部さんは大学の講義で学生に伝えています。例えば、画家が知らず知らずのうちに、大気の変化の影響を受けて表現を変えていることがあるそうで、ターナーやドガの絵画である時期を境に赤味が増していくのは、当時の火山噴火で空が赤っぽくなっていったことが影響しているのではないかと考えられています。また、モネの絵画で、だんだんと輪郭が曖昧な霞んだ表現形態に変遷していくきっかけは、当時問題となっていたスモッグが影響していると長谷部さんはみています。絵画の他にも、実はアニメや漫画といったサブカルチャーの表現形態も気象と密接に関わっていると考えており、授業の題材に選ぶようにしているそうです。例えば、スタジオジブリの宮崎駿監督の作品では、“風”が効果的に使われているといいます。「旅立ちのシーンでは冷たい風が吹く」というように、風を舞台装置にして登場人物の心情をより印象付けるように表現しているシーンがいくつか見られるのだそう。アートを気象の観点から読み解くことで、「新たな発見や視点の獲得につながれば」と長谷部さんは話します。実際に講義を受けている学生の声を聞くと、「今までは気象に注目してアートを鑑賞することはあまりなかったが、講義を通じて改めて見てみると、なるほどと思った」と新鮮な気付きに繋がっているようです。こうした内容などを膨らませてまとめた書籍『天気でよみとく名画 フェルメールのち浮世絵、ときどきマンガ』(中央公論新社)を2024年2月に出版しました。とても注目を浴びており、これをきっかけに、講演や執筆の依頼が増えているといいます。直近では日本経済新聞で2024年12月に連載を持ちました。「気象という観点を通じて、アートの新しい見方を広く世の中に提示できているのでは」と長谷部さんはやりがいを感じています。いまや気象キャスターや大学講師として活躍されている長谷部さんですが、実は信州大学 教育学部数学科入学時は中学校の先生を目指していたといいます。しかし、在学中に理想と現実のギャップを感じて方向転換し、小諸市のケーブルテレビに記者兼キャスターとして就職。その後、茨城県、栃木県などのラジオ局でパーソナリティやディレクター業に従事しました。そんなある時、大学時代に勉強していた数学の知識を活かせる資格があると知人から聞き、それが気象予報士でした。専門資格をとって、仕事を極めることもよいかもしれない―。そう考え、忙しい仕事の合間を縫って猛勉強し、合格率わずか5%の難関に2年で合格しました。その後、気象キャスター、大学講師、書籍執筆、講演活動と活躍の場を広げてきた長谷部さんですが、「いま振り返ると、これまでのどの仕事も、自分が大事だと感じたことや面白いと思ったことを“伝えたい”という想いが根底にある」と話します。そしてこれからも、気象を軸にしながら伝えることを続けていきたいと今後の展望を語ってくれました。気象×アート188bet体育_188bet备用网址を切り拓く大学講師や書籍出版も記者、キャスター、大学講師…共通するのは、“伝えたい”
元のページ ../index.html#13