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公開日:2025年2月13日 15:31
工学部トポロジー最適化の設計プロセスを効率化する新手法の提案

トポロジー最適化とは、コンピューターによる解析に基づいて構造物や部品の形態?配置を最適化する設計手法です。この方法には、設計の自由度が高いという利点がある反面、計算コストが高く、時間がかかるという課題がありました。また、設定によっては、多くの試行錯誤を必要とする設計問題となることもありました。
信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(工学系)藤井雅留太教授は、トポロジー最適化において、新しい計算手法を提案することにより、計算効率を大幅に改善させ、より短い時間での計算を可能にしました。これまで何十時間とかかっていた計算が、数十分程度に短縮するうえ、試行錯誤などの設計者による作業が必要なプロセスも大幅に省略されました。
高い自由度の反面、適応範囲の拡大により課題も表面化
トポロジー最適化は一般的には聞き慣れない言葉ですが、建築や自動車部品など、日常生活の様々な分野に応用されはじめている技術です。建造物や工業製品などの目標とする性能を実現するため、体積?重量など一定の条件下で、最適な構造を求めるために使用されます。寸法最適化や形状最適化よりもさらに設計の自由度が高いことから、高い性能やこれまでにない機能などを実現する構造設計が可能です。
しかし同時にこの手法は、困難な性質を複数内包するものであり、すべての問題を解決するのは難しいと言われていました。特に、近年トポロジー最適化の適応範囲が、弾性力学から、熱?電気?電磁波?音響振動など多様な物理を制御する問題へと拡大される過程で、これらの困難な性質が表面化し、十分な性能を実現する最適化構造の設計を難しくしていました。
最適化問題の課題を同時解決する新提案
トポロジー最適化において課題とされてきたのは、①多くの局所的最適解が存在する多峰性、②設計変数が非常に多い問題において取り得る構造が指数関数的に増えることで最適解が得られない“次元の呪い”、③複数の設計変数の相対的な変化が目的関数に影響する依存性問題などです。従来、これら1つ1つの課題を個別で解決することはできても、すべてを同時に解決することは困難とされてきました。
これに対し藤井教授が提案した新手法では、設計時に構造の表現方法をこれまでと変えることで、数値解析の精度を維持しながらも設計変数(※1)を減らすことを可能とし、これらの問題を同時に解決することに成功しました。
フーリエ級数展開によって設計プロセスを大幅効率化
具体的には、空間的な分布をもつ設計変数をフーリエ級数展開(※2)することによって、空間的に離散化されていた設計変数を、フーリエ係数(※3)に置き換えることができるようにしました。解析の精度に関係してくる空間の離散化(※4)と依存関係にあった設計変数において、互いの依存関係をなくし、それぞれ別々に独立に設定することが可能となったため、設計変数を減らしても解析の精度を保つことができます。これにより、計算時間は短縮され、設計者による試行錯誤のプロセスも省略されました。
力学、光学、熱学などのあらゆる分野の設計問題に対しても効果的に最適解を導き出すことを可能とするこの188bet体育_188bet备用网址は、トポロジー最適化の新たな手法を提案し、設計プロセスの効率化に大きく貢献するものです。
ポイント
トポロジー最適化問題においては、複数の課題が存在し、それらを同時に解決することは困難とされていた
空間的な分布をもつ設計変数をフーリエ級数展開する新手法によって、複数の課題を同時に解決することが可能となった
新手法は、光学や熱学、力学などあらゆる分野に用いることが可能
用語説明
- ※1 設計変数
最適設計において、最適化されるパラメータのこと。
- ※2 フーリエ級数展開
周期関数の重ね合わせにより任意の関数を表現する方法。
- ※3 フーリエ係数
周期関数を三角関数(正弦波や余弦波)の無限和として表現する方法。
- ※4 空間の離散化
数値化計算の解析において空間を小さく分割する考え方。分割の仕方が小さければ小さいほど計算の精度が高くなる。
論文情報
雑誌名:Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering. Volume 432, Part A, 2024, 117331
論文タイトル:CMA-ES-based topology optimization accelerated by spectral level-set-boundary modeling
著者:Shin Tanaka, Garuda Fujii
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