食品?農業
公開日:2025年2月28日 13:02
農学部信州特産の野沢菜が免疫機能を高める!マクロファージを活性化

私たちは日々さまざまな病原体にさらされていますが、体の防御機能が働くことで健康を維持しています。その防御機能を支えているのが免疫細胞です。免疫細胞の働きには、生活習慣や食事が関与しており、免疫機能を高める効果を持つ食品が注目されています。
田中准教授らは、信州の特産である野沢菜に着目し、その抽出物が免疫の初期反応を担うマクロファージにどのような影響を与えるか、またどのようなメカニズムで作用するのかを調べました。
野沢菜の抽出物はマクロファージを活性化させるのか?
免疫機能の維持には、生活習慣とともに食生活が重要です。これまでに田中准教授らは、信州特産である野沢菜の抽出物に樹状細胞(※1)やNK細胞(※2)といった免疫細胞を活性化させる作用があることを発見していました。
今回、田中准教授らは野沢菜のマクロファージへの作用を調べました。マクロファージは免疫細胞のひとつで、病原体など異物を取り込み分解し、他の免疫細胞に病原体の情報を伝える機能があります。また、サイトカイン(※3)を分泌し、炎症や免疫応答を調節します。マクロファージは生体防御の最前線で働き、健康維持や感染防御において非常に重要な細胞です。

野沢菜の多糖がマクロファージを活性化、抗腫瘍効果も
田中准教授らは、野沢菜の熱水抽出物を調製し、マウスのマクロファージに添加しました。
その結果、マクロファージは細胞膜上のTLR2とTLR4(※4)を介して野沢菜抽出物を認識し、活性化することが明らかになりました。活性化したマクロファージは、IL-6(※5)やTNF-α(※6)いった複数のサイトカインを多く分泌し、さらに異物を分解してその情報を免疫細胞に伝える機能が向上しました。
これらの作用は野沢菜に含まれる多糖の働きによるものでした。
がんを移植したマウスにこの多糖を投与すると、腫瘍の縮小効果が確認されました。

野沢菜の力をさらに188bet体育_188bet备用网址!感染予防に期待
今後は、インフルエンザウイルスなどを用いた実験を行い、野沢菜の感染予防効果を検証する予定です。さらに、ヒトでの効果を確認するため、野沢菜漬けなど食品としての適切な摂取量についても188bet体育_188bet备用网址を進めます。
もし野沢菜がヒトの感染予防に役立つことが明らかになれば、健康維持だけでなく、医療費の削減にもつながると期待されます。
ポイント
信州特産品の野沢菜の抽出物が、免疫細胞のひとつであるマクロファージに及ぼす作用とその作用機序を調べた。
野沢菜の抽出物に含まれる多糖によってマクロファージは活性化し、サイトカインの分泌量や貪食能が向上した。がんを移植したマウスに多糖を投与すると、腫瘍の縮小効果があった。
今後はインフルエンザウイルスを用いた実験や、ヒトでの適切な摂取量の188bet体育_188bet备用网址を進める。野沢菜が感染予防に役立てば、健康維持や医療費削減につながると期待される。
用語説明
- ※1 樹状細胞
体内の異物を取り込み、その情報をT細胞へ伝える役割を持つ。免疫の司令塔として働く。
- ※2 NK細胞
Natural Killer(ナチュラル?キラー)細胞。ウイルスに感染した細胞やがん細胞など異常細胞を排除する。
- ※3 サイトカイン
細胞間の情報伝達を担い、免疫応答や炎症、細胞増殖?分化などを調節するタンパク質。
- ※4 TLR
Toll-like receptor。病原体由来の特定分子を認識し、免疫細胞を活性化して自然免疫応答を促進する受容体。
- ※5 IL-6
Interleukin-6。免疫細胞が分泌するサイトカイン。炎症反応や免疫応答の調節に関与する。
- ※6 TNF-α
Tumor Necrosis Factor-α。マクロファージなどが分泌するサイトカイン。炎症、免疫調節、アポトーシス(細胞死)、抗がん作用などに関与する。
論文情報
雑誌名:Archves Biochemistry and Biophysics. Volume 752, February 2024, 109879.
論文タイトル:
Characterization and anti-tumor activities of polysaccharide isolated from Brassica rapa L. via activation of macrophages through TLR2-and TLR4-Dependent pathways.
著者:
Rina Matsui, Katsunori Endo, Takeru Saiki, Hazuki Haga, Weidong Shen, Xiangdong Wang, Shinya Yamazaki, Shigeru Katayama, Kenji Nagata, Hidemitsu Kitamura, Sachi Tanaka
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0003986123003788?via%3Dihub(論文へリンク)
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