低炭素?エネルギー
公開日:2025年3月 4日 09:56
工学部世界初、100㎡規模でソーラー水素の製造実証実験、安全性などを確認

アクア?リジェネレーション機構 久富隆史教授は、堂免一成特別栄誉教授らと共同で、100㎡という大規模で、光触媒(※1)によりソーラー水素(※2)を製造する人工光合成(※3)システムの実証実験を世界で初めて行い、安全かつ安定的に高純度の水素を製造することに成功しました。これまで光触媒による水分解反応を利用した水素製造188bet体育_188bet备用网址の多くは実験室内で行われてきました。しかし、その技術を実用化して社会実装するためには、屋外での大規模な実証実験が必要です。こうしたことから、久富教授らは本実証実験を行い、その安全性などを確認しました。本188bet体育_188bet备用网址はソーラー水素を社会で実際に活用するための足掛かりとなるものと言えます。
ソーラー水素実用化への足掛かりに
化石燃料に代わる新たなエネルギーとして人工的に水素を製造する188bet体育_188bet备用网址が進められています。なかでも、自然エネルギーを用いることにより製造過程でCO2の排出を伴わない「グリーン水素」(※4)を、効率的かつ大規模に製造していくことが求められています。グリーン水素のうち太陽光を利用して造られたものが「ソーラー水素」で、水中に設置した粉末状の光触媒に太陽光を当てて水分解反応を起こし、水から水素を取り出して製造することができます。光触媒を用いたソーラー水素の製造システムは「人工光合成」を低コストで実現できる可能性のある技術として注目を浴びていますが、これまでは実験室内での188bet体育_188bet备用网址にとどまっており、実用化に向けて屋外環境下での安全性の確認などに課題がありました。
長期間?安全に製造できることを確認
こうしたなかで、久富教授らは技術の実用化を目指して、光触媒水分解パネル反応器と水素?酸素ガス分離モジュールを連結した反応システムを開発し、屋外での自然太陽光下で100㎡規模という大規模な実証実験を世界で初めて行いました。
その結果、屋外環境で継続して1年程度、水素と酸素の混合気体を発生させることと、この混合気体から水素濃度約94%の透過ガスと酸素濃度60%以上の残留ガスに安全に分離することに成功しました。水素は可燃性ガスで、1気圧の混合気体中の水素濃度が4~95%の範囲で着火すると爆発しますが、実証実験では1年以上にわたる屋外試験の間、一度も自然着火?爆発は発生しませんでした。
また、天候?季節によらず約73%の回収率で水素を分離できることも確認しました。その後の188bet体育_188bet备用网址により、水素の純度や回収率は改善されています。
長野県飯田市で5000㎡規模の大規模実証も計画
今回の実証実験は、100㎡の大面積でも太陽光による水分解が可能であり、生成した水素と酸素の混合気体から長期間?安全にソーラー水素を分離?回収できることを実証しました。
現在、久富教授らは、技術の社会実装へ向け、長野県飯田市で5000㎡規模というさらに大規模な実証実験を計画しています。より大面積でも、長期に安全に使用できることの確認や、大量生産に向けてより低コストで実現できるシステムの開発などに取り組みたい考えです。
水素は新たなエネルギーとして期待されるだけでなく、工業製品や肥料といった化学製品にも多く使われています。久富教授らの技術はこうした分野でも、今後ますます注目を浴びていきそうです。
ポイント
世界初の大規模なソーラー水素製造の実証実験
屋外で大面積でも長期間?安全にソーラー水素を分離?回収できることを実証
グリーン水素、ソーラー水素の実用化へ向けた大きな一歩
用語説明
- ※1 光触媒
太陽などの光に当たることで、化学反応を起こす物質のこと。
- ※2 ソーラー水素
グリーン水素の中でも、太陽光を利用して造られたもの。光触媒を用いた製造システムの188bet体育_188bet备用网址が活発に行われている。
- ※3 人工光合成
植物の光合成を模倣して、太陽光エネルギーを利用して水と二酸化炭素から有用な化学物質(例えば水素や有機化合物)を生成する技術。
- ※4 グリーン水素
自然エネルギーを用いることにより製造過程でCO2の排出を伴わない水素。製造過程で化石燃料を使用してCO2の排出を伴うものは、いわゆる「グレー水素」「ブルー水素」と呼ばれる。
論文情報
雑誌名:Nature. Volume 598, Issue 7880, pp.304–307, 2021
論文タイトル:Photocatalytic solar hydrogen production from water on a 100-㎡ scale
著者:Hiroshi Nishiyama, Taro Yamada, Mamiko Nakabayashi, Yoshiki Maehara, Masaharu Yamaguchi, Yasuko Kuromiya, Yoshie Nagatsuma, Hiromasa Tokudome, Seiji Akiyama, Tomoaki Watanabe, Ryoichi Narushima, Sayuri Okunaka, Naoya Shibata, Tsuyoshi Takata, Takashi Hisatomi & Kazunari Domen
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