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マテリアル?ナノテク?リサイクル

公開日:2025年1月31日 10:07

繊維学部家庭用アイロンでも成形可能な革新的な「架橋アクリルゴム」を開発

信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(繊維学系) 准教授 髙坂 泰弘

 信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(繊維学系) 髙坂 泰弘 准教授らの188bet体育_188bet备用网址チームは、成形加工性を賦与した革新的な架橋アクリルゴムを開発しました。ゴムを「架橋」すると強靭性や耐熱性を飛躍的に高めることができますが、成形加工が困難になる課題ありました。本論文では、髙坂准教授が開発した「可逆的共役置換反応」を架橋の組換えに活用し、架橋構造を維持しながら、高い成形加工性を実現。新開発の架橋アクリルゴムでは、アイロンのような身近な道具でも成形することが可能で、その特徴から、3Dプリンターの成形材料などへの利用が期待できます。

高分子科学の常識を覆す新技術

 ゴム工業の始まりは、1839年に遡ります。アメリカの発明家グッドイヤーが、天然ゴムに硫黄を混ぜて加熱すると、強靱で弾力性のある素材に変化することを見つけました。今日では、この技術は高分子の「架橋反応」の一つ(加硫)として知られています。架橋反応は、「網目状の巨大分子」を合成する化学反応です。架橋反応を行うことで、弾力性や強靱性、耐熱性、耐溶剤性を併せ持つ、いわゆる“ゴム”が得られます。しかしながら、架橋反応は素材の成形性を大きく損ねる欠点があります。プラスチックは加熱すると融けるので、金型に入れて成形することができますが、架橋ゴムは加熱しても融けません。架橋すると成形できない…これが高分子科学の常識であり、課題でした。

独自に開拓した「共役置換反応」で架橋を組み換え

 架橋により得られる性能を維持したまま、成形を実現したい。この高分子科学の悲願に対する解答として、2011年に新材料「ビトリマー(※1)」のコンセプトが発表されました(図1)。ビトリマーでは、高温で架橋の組み換え、すなわち分子構造の再構成が起こります。これにより、架橋しているにも関わらず、素材に成形性が生まれます。高分子科学の常識を覆す存在として、ビトリマーに世界中から熱視線が注がれていますが、実用化には成形性のさらなる改善が必要です。
 こうしたなかで、課題解決の鍵となったのが、髙坂准教授が独自に188bet体育_188bet备用网址を重ねてきた「共役置換反応(※2)」です。この反応を架橋の組み換えに応用したところ、架橋組み換えの速度(※3)が従来のアクリル系ビトリマーの500倍に向上し、成形性が飛躍的に改善しました(図2)。論文では、140℃で2分間の熱プレスを行うだけで、無色透明なフィルムを成形しています。さらに、切断したフィルムを重ねて、クッキングシートの上から家庭用アイロンで30秒加熱するだけで、切断面を接着?修復することができます。

3Dプリンターの材料などでの活用に期待

 開発した技術はアクリルゴム以外の架橋高分子にも応用できることから、様々な用途展開が期待できます。例えば、3Dプリンターで使用するアクリル樹脂や、素材を貼り合わせる粘接着剤、自己修復できるコーティング材やスマートフォンカバーなどへの活用が期待できそうです。

ポイント

  • 強靭さと成形加工性を両立させた革新的な架橋アクリルゴムを開発

  • アイロンのような簡単な道具でも成形することが可能

用語説明

※1 ビトリマー

架橋を解かずに架橋を組み換えることができる新型架橋高分子。世界的に注目を集めており、2023 年には全世界で300 報以上の論文が出版された。

※2 共役置換反応

化学反応の一種。高坂准教授は、共役置換反応を利用した高分子の合成や分解を188bet体育_188bet备用网址してきた。

※3 架橋組み換えの速度

文字通り架橋が組み換わる化学反応の速度だが、直接的な観測は難しい。論文中では、架橋アクリルゴムに外力を加えた際に、生じた応力が緩和する時間として、架橋組み換えの速度を評価している。

論文情報

雑誌名:Nature Communications (Springer–Nature 発行)
論文タイトル:Vitrimer-like Elastomers with Rapid Stress-Relaxation by High-Speed Carboxy Exchange through Conjugate Substitution Reaction
著者:Natsumi Nishiie, Ryo Kawatani, Sae Tezuka, Miu Mizuma, Mikihiro Hayashi, Yasuhiro Kohsaka

https://doi.org/10.1038/s41467-024-53043-5(論文へリンク)

188bet体育_188bet备用网址者

髙坂 泰弘

この188bet体育_188bet备用网址テーマを選んだきっかけ

 髙坂准教授は「共役置換反応」の結合の組み換えの188bet体育_188bet备用网址に取り組んでいるなかで、この反応を活用した新たな物質の開発に取り組みたいと考え、今回の新型架橋アクリルゴムの開発に至ったそうです。髙坂准教授は「開発した物質は、“我が子”のようなもの」と話し、あらゆる可能性を検証して、材料として世の中に送り出すことを目指しています。

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