マクロファージによる炎症制御の新たな仕組みを解明

医学部医学科免疫制御学教室の山条秀樹准教授、理学部理学科生物学コース4年生(当時)の岩堀勝樹さんらの188bet体育_188bet备用网址グループは、マクロファージが関与する炎症応答における新たな制御メカニズムを明らかにしました。本188bet体育_188bet备用网址成果は、国際学術誌 International Immunology に掲載されました。
(背景)
炎症応答は、生体が外敵や損傷に対抗するために備えている重要な防御反応です。しかし、この反応が過剰に継続すると、組織の回復が阻害され、慢性炎症や自己免疫疾患などのさまざまな病態につながることが知られています。炎症には多様な細胞が関与しますが、なかでもマクロファージは、「炎症の開始」と「炎症の収束」という、相反する二つの段階の両方に関与する免疫細胞として重要です。特に、炎症の収束過程におけるマクロファージの機能や変化については、未解明な点が多く残されています。
(188bet体育_188bet备用网址内容と成果)
本188bet体育_188bet备用网址では、急性腹膜炎モデルマウスを用いて、マクロファージが炎症の収束に至る過程でどのように変化するのかを解析しました。炎症を誘導した野生型マウスでは、腹腔内に常在するマクロファージが消失した後、骨髄由来単球が炎症部位に動員され、単球由来マクロファージ(MOM)へと分化しました。そして炎症は収束へと向かいました。ところが、マクロファージにおいて細胞内シグナル伝達分子TAK1を特異的に欠損させたマウス(TAK1mKOマウス)では、このMOMが出現せず、炎症が持続することが確認されました。この観察結果から、MOMの存在が炎症の収束にとって不可欠であることが示唆されました。さらに188bet体育_188bet备用网址グループは、MOMの前駆細胞として新たな細胞集団moMAPを同定しました。野生型およびTAK1mKOマウスの両者において、腹膜炎の誘導後にmoMAPが出現することが確認されましたが、TAK1mKOマウスでは、moMAPが細胞死を起こすことでMOMへの分化が妨げられることが分かりました。これらの結果から、炎症の収束にはmoMAPからMOMへの分化が必須であり、TAK1はその過程においてmoMAPの生存を維持するために重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
(今後の展望)
今回の188bet体育_188bet备用网址成果は、炎症反応時に出現するMOMが炎症の収束において重要であり、そのためにはTAK1が正常に機能することが必須であることを初めて示した点で意義深いものです。炎症時に出現するmoMAPがMOMへと分化するメカニズムの解明は、過剰な炎症を制御するための新たな治療戦略の開発につながることが期待されます。
(論文)
TAK1 governs monocyte-derived macrophage development in acute sterile peritonitis
Iwahori K, Maeda K, Sanjo H.
Int Immunol. 2025. Mar 29
(連絡先)
山条秀樹
Email: hsanjo@shinshu-u.ac.jp