信州大学発、 "アクア?リジェネレーション"を世界へ 水の高度利用で、世界の諸課題に挑む!特別レポート

188bet体育_188bet备用网址力を核に一歩先のソリューションを共創

信州大学発、 “アクア?リジェネレーション”を世界へ 水の高度利用で、世界の諸課題に挑む!

信州大学が「グレーター?ユニバーシティ?ビジョン(VGSU)※1」の実現に向けて特に注力しているのが「アクア?リジェネレーション(ARG)」の188bet体育_188bet备用网址です。ARGは水循環利用や水由来の水素エネルギー製造といった“水の高度利用”を通じ、地球環境問題などの世界の諸課題の解決を目指す新しい学問分野です。現在、本学では「188bet体育_188bet备用网址の卓越性」、「イノベーション創出」、「地域貢献」を三本の矢として一体的に推進しているところであり、その取り組みが評価され、2023年度地域中核?特色ある188bet体育_188bet备用网址大学強化促進事業(J-PEAKS)※2に採択されています。本特集では、ARG分野の188bet体育_188bet备用网址開発と社会実装において本学と共創してくださる仲間集めを目的としたイベント「水都信州week」(2024年3月開催)の内容をダイジェスト形式でまとめ、本学のARG分野の取り組みについてご紹介します。

※1) VGSU“: Extend(伸ばす)”、“Expand(拡げる)”、“Enrich(豊かにする)”の観点から、県境を越えた広域連携により新たな価値創出を目指す経営ビジョン。

※2) 地域中核?特色ある188bet体育_188bet备用网址大学強化促進事業(J-PEAKS):地域の中核大学や188bet体育_188bet备用网址の特定分野に強みを持つ大学が、他大学との連携等を図りつつ、188bet体育_188bet备用网址活動の国際展開や社会実装の加速等により188bet体育_188bet备用网址力強化を図るための環境整備に対して、文部科学省が支援する事業

????? 信州大学広報誌「信大NOW」第148号(2024.11.29発行)より

ffca0d41d82651153a1b0c1cc3fe1d6a_4.png

アースポジティブ実現のために― “水”を起点に産学官でアクションを!

0687791aedc21f830735e800c9589601.jpg

手嶋勝弥
学術188bet体育_188bet备用网址院(工学系)
アクア?リジェネレーション機構長
学長特別補佐 先鋭材料188bet体育_188bet备用网址所長 卓越教授

信州大学はアクア?リジェネレーション(ARG)分野の188bet体育_188bet备用网址を学内で一体的に推進していくため、「アクア?リジェネレーション機構」を2024年3月に新設しました。「水都信州week」では、同機構長である手嶋勝弥 学長特別補佐 先鋭材料188bet体育_188bet备用网址所長卓越教授が、機構新設により本学のARG188bet体育_188bet备用网址が今後どのように広がっていくのかを説明。地球環境の再興を図る「アースポジティブ」の実現に向け、産学官の多様なプレイヤーを巻き込みながら具体的なアクションを加速させていきたいと語りました。

松本に188bet体育_188bet备用网址のコア施設 飯田で水?グリーン水素を実証

現在の地球環境がどのくらい危機的な状況にあるかをまとめた「プラネタリーバウンダリー」を見ると、9つの指標のうち6つが危機的ゾーンに入っています。まさに、“待ったなし”の状況であり、地球単位で自然環境の再興を図る「アースポジティブ」の実現に向けて、今すぐアクションを起こす段階にあると思います。 

信州大学は具体的なアクションを起こしていきます。その一つが「アクア?リジェネレーション機構」の立ち上げです。これは、水の高度利用を推進し、アースポジティブへの貢献を目指す188bet体育_188bet备用网址組織で、本学の強みである水関連の基礎188bet体育_188bet备用网址がコアになります。「水の循環利用」と、「水由来のグリーン水素エネルギー」の2つの188bet体育_188bet备用网址分野を柱としており、それぞれが最先端を走っていると自負しています。ただ、188bet体育_188bet备用网址をさらに進め、社会実装にまで持っていくためには、信州大学だけでは力不足です。産学官の多様な方々と連携しながらアクションを起こしていきたいと考えています。

10年計画で取り組みを推進していく方針で、まず2024年度に松本キャンパスにARGのコアとなる188bet体育_188bet备用网址施設を新設する予定です。また、信州大学南信州?飯田サテライトキャンパス内に水循環?グリーン水素生成の拠点をつくり、そこで製造したグリーン水素を燃料とした次世代モビリティの実証などに取り組みます。水源の豊富な信州は、ARGでアースポジティブを実現していくベストな地です。“信州モデル”を構築し、世界へと広げていきたいと考えています。

タンザニアなどで先行して信州モデルを展開

a6881d120f04dfcd73e30fa1aecec24c.jpg

給水の実証試験開始にあたり開催された式典(タンザニア?レマンダ村)の様子

ARG188bet体育_188bet备用网址の中で既に信大モデルを世界へと展開しているものもあります。私の188bet体育_188bet备用网址室では、高機能な無機結晶材料「信大クリスタル」を開発し、これを浄水技術として活用した取り組みを行っています。国内ではアクアスポット(無料の浄水設備)「swee(スウィー)」を長野県内で約30か所(2024年1月現在)に設置するなどの取り組みを行っているほか、国外ではアフリカ?タンザニアでの飲み水確保に取り組んでいます。同国では、フッ素過剰の地下水を飲まざるを得ない状況で、歯が溶けたり骨が曲がるなどの問題が起きています。こうした状況に対し、私たちの188bet体育_188bet备用网址室では信大クリスタルの技術を導入した浄水プラントを作り、安全安心な水を提供する取り組みを続けており、ARGの信州モデルが世界へと広がっている事例と言えます。

ただ、これは私たち信州大学だけでなく多くの企業などの方々の協力も得ながら実現できたことであり、信州モデルを社会実装し、世界で広く展開していけるかは、産学官の多様な方々とどれだけ連携していけるかに掛かっています。地球環境の危機的状況を変えてアースポジティブを実現させるためには、取り組みを現在の4倍くらいにスピードアップさせなくてはいけません。そのためには、関わっていただける方々を4倍に増やしていく必要があるでしょう。ぜひ、私たちと一緒にアクションを起こしましょう。

水の循環利用で持続可能な社会へ  “信大浄水膜”に世界が大注目

0d3d0e6125cd7ab1b5291a8c7937dec0.jpg

遠藤守信
アクア?リジェネレーション機構
特別栄誉教授

信州大学が取り組むアクア?リジェネレーション(ARG)188bet体育_188bet备用网址の大きな柱の一つが、先進的なマテリアルを用いた高機能な浄水技術の188bet体育_188bet备用网址です。「水都信州week」では遠藤守信 アクア?リジェネレーション機構 特別栄誉教授が、世界的に大きな注目を浴びている独自の「高機能RO膜」を用いた浄水技術と、同技術を活用した国内外での水循環利用の取り組みについて説明しました。水に関わる課題は地球環境や経済、健康、貧困といった様々な社会課題と密接に結びついています。遠藤特別栄誉教授は高機能RO膜を通じて水循環利用を進めることで、こうした社会的諸課題へのソリューションを提供していきたいと語りました。

深刻化する世界の水課題… “水の4R”で解決へ

世界で水に関する課題が深刻化しています。家で手を洗えない30億人が感染症の危機にさらされており、汚染水で命を落とす子どもは年間30万人います。先進国でも人体に有害な有機フッ素化合物汚染や枯渇などに悩まされています。現在、こうした水に関する課題を早急に解決していく必要があるという認識が国際的に高まっており、「Reduce」「Reuse」「Recycle」「Recharge and Respect」といった4Rの観点に基づいて、水循環に取り組んでいくことが求められています。

水の使用は経済と大きく結びついており、使用が制限されれば経済の停滞を招きます。それは本来あるべき姿ではありません。そのため、信州大学では持続可能な社会の実現に向けて、国内のみならず国外でも先進的な水の循環利用技術の188bet体育_188bet备用网址に取り組んでいます。

信大発、「高機能RO膜」がサウジ海水淡水化などに貢献

f867c7d76091d0db53d954116e167486.jpg

アルサラーム宮殿にて岸田首相(当時)に紹介いただき、ムハンマド?ビン?サルマン皇太子と握手する遠藤守信特別栄誉教授(写真提供:経済産業省)

私たちの188bet体育_188bet备用网址室では、カーボンナノチューブやポリアミドを用いた「高機能RO(逆浸透)膜」を開発しています。この膜を通すことで、汚染水の浄化や、海水の淡水化を行い、人類が適切に使用できる水をつくることができます。

この技術に国内外から大きな注目が集まっています。特に注目いただいているのが、生活用水のほとんどを海水の淡水化によって賄っているサウジアラビアです。

化学薬品を極力使用せず海洋汚染を起こさない淡水化の方法として、信州大学の技術に注目していただいています。2023年7月には、信州大学とサウジアラビア海水淡水化公社(SWCC)は、海水淡水化分野における覚書(MOU)を締結し、現地メディアからも大きく取り上げられました。

海水淡水化などに用いる高圧のRO膜とは別に、主に家庭での使用を念頭に極めて低圧で浄水できるRO膜も私たちの188bet体育_188bet备用网址室では開発しています。家庭用水道の蛇口に取り付けて使用することもできますし、手漕ぎポンプを使って小さな子どもの力で浄水することもできます。このRO膜を使用した家庭での浄水プロジェクトは、タイ、ベトナム、インド、中国などで行っています。これらの国々では、飲用水汚染が病気や貧困に至る大きな要因の一つとなっているだけに、飲用水の浄水がこうした社会的諸課題の解決の一助になればと考えています。

このほかにも、世界で高機能RO膜を使用した様々なプロジェクトを進めています。カナダではケベック州立大学、国立科学188bet体育_188bet备用网址センターと有機フッ素化合物の除去に関する共同188bet体育_188bet备用网址を行っています。また、日本国内ではTOKAI社が開発中の高機能RO膜を利用した雨水利用住宅の実証実験に協力しています。

今後もこの先進的なこの浄水技術を用いて、水に関連した様々な社会課題を解決に導き、持続可能な水循環社会をつくっていきたい―。それが私たち信州大学の願いであり、188bet体育_188bet备用网址が目指すところです。

水由来のグリーン水素エネルギー 信州から社会実装へ挑戦中!

3cdbe460497ad98ae68f8b22531545b0.jpg

堂免一成
アクア?リジェネレーション機構
特別特任教授

高機能な浄水技術による水循環利用とは別の観点で、信州大学のアクア?リジェネレーション188bet体育_188bet备用网址の大きな柱を担うのが、堂免一成 アクア?リジェネレーション機構 特別特任教授が取り組む「水由来のグリーン水素エネルギー」の実現に向けた188bet体育_188bet备用网址です。これは太陽光と光触媒を活用して水から水素を製造する方法を188bet体育_188bet备用网址するもので、CO?を排出しない「グリーン水素」の製造に向けた取り組みとして、国内外から大きな注目を集めています。「水都信州week」では、堂免特別特任教授が、信州をこの夢の新技術の発祥の地にしたいと意気込みを語りました。

注目の新エネルギー「グリーン水素」

脱炭素社会の新たなエネルギーとして、水素に注目が集まっています。水素は燃焼させてエネルギーを取り出しても化石資源とは異なりCO?が発生しないためです。しかし、実は現在製造されている水素のほとんどは化石資源を原料にして製造されており、CO?を空気中に排出する「グレイ水素」と呼ばれるものです。そのため、化石資源に頼らず二酸化炭素を空気中に排出しない「グリーン水素」の製造が、脱炭素社会の実現に向けて求められています。

グリーン水素の最も実用的な製造方法は、太陽電池や風力で発電した電気エネルギーを使って、水を電気分解し水素を製造するというものです。この方法で使用する要素技術は既に確立されていますが、社会実装に向けた大型プラントはまだ存在しないというのが実情です。それは製造コストが高いためで、今後も要素技術によほどのイノベーションが起きない限りはこの方法でグリーン水素を社会実装することは難しいと考えられます。

高効率な製造へ 新光触媒と水分解パネルを188bet体育_188bet备用网址

534c031a7d870fb32834e651e12f3ded.jpg

堂免チームが開発した100 m2規模の試作「水分解パネル」の空中写真

こうした中で、私たちの188bet体育_188bet备用网址室が取り組んでいるのが、太陽光と光触媒を活用して水から水素を製造する「微粒子光触媒水素製造法」です。これは水を酸素と水素に分解できる性質を持つ光触媒を利用したものです。こうした光触媒を微粒子粉末にして水の中に入れ、太陽光を当てることで光触媒に化学反応を起こして水を酸素と水素に分解します。そして酸素と水素の混合気体から水素を取り出すというわけです。この方法のメリットは水素の製造にかかるコストを非常に安価に抑えられる可能性があるということです。

一方で、こうした水素製造法は現状では製造効率に課題があり、私たちの188bet体育_188bet备用网址室はこの課題の解決に向けた188bet体育_188bet备用网址を行っています。具体的には、水素製造効率が高い新たな光触媒の開発と、大規模に展開していくための効率的な製造システムの開発です。現在私たちは、微粒子の光触媒をガラス基板に塗ってシート状にした「水分解パネル」を考案しており、その実用化へ向けて188bet体育_188bet备用网址に取り組んでいるところです。できるだけ早く開発して社会実装まで持っていきたいと考えています。今後、新設されたアクア?リジェネレーション機構を中核に、国や長野県、飯田市、松本市などの行政や企業の方々などとも連携しながら産学官共創で社会実装に向けて188bet体育_188bet备用网址開発を進めていきます。

微粒子光触媒水素製造法は、これまでにない世界初のグリーン水素製造法です。まだ乗り越えるべき課題はありますが、将来的に社会実装を実現し、信州をこの最先端技術の発祥の地にしたいと考えています。

ページトップに戻る

MENU