信大の地域貢献サークル&学生グループ特集Vol.1 北アルプス常念岳で、医学部学生が運営する 信州大学医学部山岳部常念診療所地域コミュニケーション
「大学の地域貢献度ランキング」では毎回上位にランクされる信州大学。長野県内に5キャンパスという、タコ足大学の伝統を誇りとする本学はもちろん学生も頑張っていて、各キャンパスを飛び出して活動する、地域貢献を目的としたサークルが多いのも大きな特徴。リンゴあり、軍手あり、山林伐採あり…信州ならではの地域貢献が盛りだくさん!「信大の地域貢献サークル特集」信大NOW誌面で紹介していきます!
????? 信州大学広報誌「信大NOW」第148号(2024.11.29発行)より
北アルプス常念岳で、医学部学生が運営する 信州大学医学部山岳部常念診療所
医療物資が限られる”山岳医療“の現場に立つ
北アルプス南部に位置し、日本百名山にも数えられる常念岳。その山頂から400メートルほど下ったところに建つ常念小屋の隣で、毎年夏の1ヵ月間ほど、登山者のために開設されるのが、常念診療所です。運営を担うのは、信州大学医学部山岳部の学生たち。山岳部部長の鳥山公平さんと、元幹部の古矢紘基さんにお話を伺いました。
診療所の運営には、現在100名ほどいる山岳部のメンバーのうち、希望者40名ほどが毎年参加しているとのこと。交代で診療所に常駐しながら、医療物資が限られる高山の場で工夫して診療を行う“山岳診療”の現場を体験しています。擦り傷や高山病、捻挫などの軽傷患者が多いそうですが、診療所だけでは対応できない重症患者の場合には、山岳ヘリによって近隣の病院に搬送されるケースもあるといいます。
もちろん、医師免許?看護師免許を持たない学生は医療行為を行うことができないため、実際に診療を行うのは、全国からボランティアとして集まる医療従事者の方々です。学生たちの仕事は、医療スタッフを公募し、開設期間内のシフトを組んだり、血圧測定や患者の記録、医薬品の出納管理などを行うこと。なかでも「毎年ボランティアの医療スタッフを確保するのが一苦労」だと、古矢さんは話します。高地での山岳診療を行っている山小屋は他にもあるそうですが、公募で医療スタッフを集めているのは、「常念診療所ぐらいだろう」とのこと。学生主体で運営している同診療所ならではの、ユニークな特徴です。
医療スタッフには、本学医学部附属病院の職員や部のOBなどのほか、山好きの医療従事者も全国から集まるといい、「いろんな背景を持った医療者の方と関われるので、楽しいですよ」と古矢さん。夜は、学生と医療スタッフが一緒になって宴会をすることもしばしばだといいます。
約40年続く伝統と責任を代々背負い、繋いで
1986年に、常念小屋の協力のもと医学部によって診療所が開設されて以降、40年近くの長きにわたり、医学部山岳部の手で守り続けられてきた常念診療所。しかし、188bet体育_188bet备用网址による影響で2020年は閉所、翌2021年の開所も危ぶまれたそうです…。
こうしたなかで、当時部長だった古矢さんが、「学生が主体でやっている以上、今年も開かなかったらノウハウが下の代に伝わらない」と訴え、顧問の花岡正幸所長の協力のもと、なんとかコロナ禍での開設にこぎつけたといいます(※週末のみ開設、スタッフは長野県内からの公募に限るなどの条件を設けたうえでの開設)。
当時のことを「診療所の存続にさえ関わるのではないかと危機感を持った」と話す古矢さんの言葉からは、40年近く診療所の運営を担ってきた医学部山岳部の、伝統と責任の重さが伝わってきます。
こうして現役学生やOBたちの努力のもと、現在までつながれてきた常念診療所ですが、コロナ禍を経て、来所する患者の数が減少しているといいます。これについて、「当然怪我がないのが一番」だとしつつも、「せっかく開いているので、気軽に来てもらいたい」と、鳥山さんと古矢さん。コロナ前にはシーズンで100名前後の利用者がいたのが、今年は十数名にまで減っているといい、「診療所の認知度を高めるためにも発信に力を入れていきたい」と、期待を込めて話してくれました。
ピラミッド形の美しい山容から、地元市民や登山者によって深く愛され、山岳部にとってはホームマウンテンとも呼べる常念岳。来年も、そのまた翌年も、夏の常念岳では医学部山岳部の面々が、登山者の安全を守るべく診療所で待っています。 (文?平尾なつ樹)