血圧の光測定における高精度化、医療業界で通用する信号処理技術の登場!産学官金融連携
信州大学の188bet体育_188bet备用网址シーズを技術移転する信州TLOとのコラボで制作した、特許技術「見える化」映像シリーズの第11弾。
今回ご紹介するのは信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(工学系)阿部 誠准教授が新たに開発した、光電容積脈波(PPG)を利用し、高精度で血圧測定できる信号処理技術です。ウェアラブルデバイスの心拍数計測などに用いられる技術で便利なのですが、これまで個人差による計測数値の誤差やデータ自体の算出根拠などが課題で、医療の現場では使われていませんでした。本技術は、医療や介護業界でもウェアラブルデバイスで血圧管理や、健康モニタリングが日常的に可能となり、業界の人手不足、DX推進に役立つと期待されています。(文?佐々木 政史)
????? 信州大学広報誌「信大NOW」第148号(2024.11.29発行)より
ウェアラブルデバイスによる血圧計測の課題とは
最近、血圧などの生体情報を簡単に、継続的に計測できる、腕時計型のウェアラブルデバイスを付けている方が増えてきました。
ウェアラブルデバイスは従来の血圧計測機器と違い、光を利用してストレスなく簡単に血圧を測ることができるメリットがあります。しかし、個人差による誤差が大きかったり、そもそも計測データの算出方法がブラックボックス化していたりするなど、正確性やモデルの柔軟性に課題があることも事実であり、多くの医療機関ではいまだに旧来の計測方法がとられています。
信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(工学系)阿部誠准教授が新たに開発した今回ご紹介する特許技術は、こうした光計測でも個人差の影響を抑え、算出データの正規化を実現するなど、やがて医療機関でも通用する血圧計測を見越した新たな信号処理技術です。
新技術は、「特徴量の正規化」?「重回帰モデルの構築」、「血圧のバイアス調整導入」という3つの特徴があります。
まず「特徴量の正規化」とは、計測における個人差を解消する技術です。年齢や性別、基礎疾患の有無などが異なることから、人それぞれに「脈波特徴量」の計測を行う際に個人差が生じてしまいます。阿部准教授の開発した技術は、脈波と血圧に関する膨大なサンプルの学習データと今のテストデータを照合することで、こうした個人差を解消し脈波特微量のデータの正規化を実現します。
2つ目の技術「重回帰モデルの構築」とは、正規化した脈波特徴量の数値から説明変数と目的変数(つまり血圧情報)の関係をモデリングして係数の推定、予測を行うものです。このモデル構築で従来の算出方法では課題となっていたブラックボックス化は解消されます。
最後の技術「バイアス調整の導入」とは、重回帰モデルで導いた数値に、年齢や性別、基礎疾患の有無などの個人差にともなう「血圧バイアス」を重ね、平均値となるモデル出力値を算出するものです。この技術によって算出されたモデル平均値と実測値にほとんど誤差が生じないことが、阿部准教授の188bet体育_188bet备用网址によって分かっています。
医療?介護業界だけでなく運送?建設業などでの活用にも期待
医療や介護の現場では、深刻な人手不足もあり、スタッフを介せず継続的に、正確に血圧を測定できる方法があればこの解消にもつながります。これまで、光電容積脈波を利用した血圧推定技術が長い間188bet体育_188bet备用网址されてきましたが、高精度な計測は難しく、医療や介護の現場で利用できる光計測技術は開発されてきませんでした。
また、「簡単で、経常的に計測ができ、血圧管理や健康モニタリングが必要とされる業界に向いている」と阿部准教授は話します。本技術で高精度な血圧測定が可能なウェアラブルデバイスが実現すれば、職員に長時間の集中が求められるような現場、さらには運送業や建設業といった健康状態の管理次第で生命にも影響するような現場への活用も期待されそうです。
まずはウェアラブルデバイスなどで、簡単に、経常的に、正確に血圧計測できる…今回ご紹介した信州大学が新たに開発した「血圧の光計測信号処理技術」の特許は、その高精度から今後血圧に限らず人体情報全般に広がっていくかもしれません。
【特許情報】
発明の名称:光電容積脈波を用いた血圧推定方法および血圧推定用コンピュータプログラム
特許番号:第7570631号
出願人:信州大学
発明者:阿部 誠 藤井 徹