医療機器製品?部品メーカーによる技術シーズ展示会2015産学官金融連携
医療の現場に革新を!
信州大学医学部と精密機器?医療関連機器メーカーなどで組織する信州メディカル産業振興会が、2015年12月16~17日の2日間、「医療機器製品?部品メーカーによる技術シーズ展示会2015」(※1)を開催した。企業の優れた技術シーズを、主に医療従事者に向けて展示?発信することで、医療現場のニーズとのマッチングを図り、新しい医療機器等の開発アイデアに結びつけ、メディカル産業の振興を目指すことが目的だ。
第4回目となる今回は、信州大学医学部附属病院の大会議室を会場に、全22社の製品や技術などを展示、のべ約270名が来場した。
今回は、その中から4つの企業の製品、技術にフォーカスしてみた。
????? 信州大学広報誌「信大NOW」」第97号(2016.1.29発行)より
(※1)主催:信州メディカル産業振興会
信州メディカルシーズ育成拠点
信州大学産学官?社会連携推進機構
信州大学医学部附属病院
共催:(公財)長野県テクノ財団
小さな力でピタリと止まる、手術用局所撮影用カメラアーム
サイウィンド(株)
手術中、助手や麻酔科の医師などのために、手術の様子をモニターに写し出すことも多い。そうした際に用いられるのが局所撮影用のカメラアームだ。
サイウィンド(株)は、医療用の局所撮影用のアームを開発、2014年8月から販売を開始し、すでに信州大学医学部附属病院でも使用されている。
同社の強みは「フリーストップアーム」。重量5kgのものでも片手で軽く動かせ、好きな所でピタリと止まる。2013年の展示会で、信州大学の松尾特任教授から「手術用に自由に細かく動かせるアームは作れないか」と打診があったことがきっかけになり、医学部との情報交換を進めながら、手術の局所撮影用などに最適なアームとして、「手術支援用フリーストップ多機能アーム」を開発した。
もともと顧客のニーズに合わせ、アームのバリエーションを増やしながら臨機応変な開発を実現してきた同社。今後、バリエーションの豊富化と、小型で軽量、取り付けやすく低価格なアームの製造も検討している。
足裏刺激を行う機能性靴下「スパイクソックス」
(株)タイコー
昨今、平均寿命だけでなく、健康的な生活を送れる健康寿命の延伸が求められている。自ら動き、自立した生活を長期間送れることが、健康寿命延伸のための重要な要素だ。
(株)タイコーが進めるのは、履いているだけで足裏刺激を行う機能性靴下「スパイクソックス」の開発だ。約2年前から信州大学木村貞治教授(保健学系)との共同開発が始まり、現在、販売に向けモニター試験などを行っている。
スパイクソックスの最大の特徴は、足裏部分に設けられた突起だ。履いているだけで足裏にあるバランス感覚を司る器官「メカノレセプター」を刺激する仕組みで、脳内のバランス感覚の向上が期待できる。高齢者の転倒による骨折などを未然に防止することが目的だ。
もともと機能性ソックスの製造を行っていた同社。しかし、スパイクソックスのような形状は想定しておらず、木村教授の提案により新たな知見を得て実現した。今後、同社は医療業界と連携を強化し、さらなる製品開発につなげたいとしている。
過酷な医療現場を改善。手術専用いす「サージカルサポートチェア」
タカノ(株)
形成外科医をはじめとして、医師は座位=椅子に座った状態で10時間以上の手術を行うことも珍しくないという。長時間の手術では、痛みやしびれ、蒸れによる不快感が出ることもあるが、これまで手術用のいすはスツールのようなものしかなく、過酷な医療現場に見合った形で進化してはこなかった。
医療現場のこうした課題を受け、オフィスチェア製造メーカータカノ(株)が信州大学医学部松尾清特任教授との共同開発により新たに製造したのが、手術専用いす「サージカルサポートチェア」だ。
座面の奥行をあえて短くすることで、骨盤を立て、背もたれ部に腰が当たるまで深く座るよう導き、長時間座ったままでも疲れにくい姿勢を自然と作れるように設計され、また、メッシュ素材を採用することで蒸れを抑えると共に、座面を波型にすることで圧力を分散させ、座骨への圧迫も軽減した。
1月上旬に販売され市場に投入され始めた。同社と医学部との共同開発は2例目。振興会を通じた相互の情報交換が共同開発につながった。今後も連携を強化し、メディカル分野のニーズに応えていきたいという。
医療現場のコミュニケーションに変革を。最新鋭スマートヘッドセット
セイコーエプソン(株)
セイコーエプソン(株)は、2015年9月から発売を開始した業務用スマートヘッドセット「MOVERIO Pro BT-2000」を展示した。メガネのように装着し、レンズを通して視界に情報を表示させる装置で、医療現場だけでなく、さまざまな産業に変革をもたらす最新鋭の機器として注目を浴びている。
例えば、災害現場で作業者が装着し、遠隔地の医師の指示を仰ぐためのコミュニケーションツールとしての使用が想定される。このツールは音声認識機能もあり、音声で操作すれば、レンズに表示される情報を確認しながら、完全なハンズフリーで作業ができる。緊急を要する現場で、映像と音声による遠隔支援を受けながら、しかもハンズフリーで作業ができれば、作業の質や効率が格段に向上、現場の情報共有も即座に行える。
迅速な対応が求められる医療分野に革新をもたらす可能性を秘めている装置だ。