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「産む?産まない選択肢」を尊重する世の中へ。“中絶ケア”の普及へ尽力!

 佐藤優香さんは、助産師としての病院勤務やJICA青年海外協力隊での国際ボランティア活動という経歴を経て、信州大学大学院で“中絶ケア”の188bet体育_188bet备用网址に取り組んでいます。中絶ケアは、女性が人生をいきいきと暮らすために重要なものとして先進諸国ではSDGsの観点からも注目が集まっていますが、日本では取り組みが遅れているのが実情です。その普及へ向け、第一線に立つ佐藤さんが描く未来とは―。(文?佐々木 政史)

????? 信州大学広報誌「信大NOW」第139号(2023.5.31発行)より

中絶ケアに消極的な日本

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JICA青年海外協力隊としてモロッコで同僚との一コマ。ここでの経験も佐藤さんがSRHRに取り組むきっかけになった。

 「SRHR」(Sexual and ReproductiveHealth and Rights)という言葉をご存じでしょうか。「性と生殖に関する健康と権利」と和訳されています。WHOなどの国際機関で提唱されており、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に関連するものとして重要視されています。
 このSRHRに寄与するもののひとつとして、「人工妊娠中絶」(以下、中絶)があります。女性にとって「子どもを産むか産まないか」はその後の人生を決める重要な事柄です。それだけに、ドメスティックバイオレンスや未成年といった理由で予期せぬ?望まない妊娠をした人、ひとり親家庭など子どもを育てる経済的余裕がない人などが、自らの意思で「産む?産まない」という選択肢をきちんと選べることは、女性の基本的な権利とされており、SRHRはそれを尊重しています。
 もちろん、中絶については、倫理的観点から国内外でその是非をめぐって今なお議論があることは事実であり、そもそも中絶という選択肢をとらなくてよいような社会をつくり、中絶を減らす取り組みがなされています。
 ただ、身体的、精神的、経済的観点から中絶を選択せざるを得ない女性がおり、中絶はその当事者に精神的に非常に大きな負荷が掛かります。そのため、中絶前から中絶後まで様々な面から助産師などがケアを行う「中絶ケア」が必要になりますが、日本では積極的ではありません。中には積極的に取り組んでいる人もいますが、個人レベルにとどまり、助産師一般の取り組みにまでは広がっていないというのが実情です。

個人レベルの取り組みを標準化へ

 こうしたなか、日本での中絶ケア188bet体育_188bet备用网址の第一線に立つのが、総合医理工学188bet体育_188bet备用网址科医学系専攻 保健学分野 博士課程1年生の佐藤優香さんです。
 佐藤さんは2014年に信州大学医学部保健学科を卒業後、地元北海道の病院で助産師として勤務しました。その後、JICA青年海外協力隊としてモロッコで母子学級や妊婦健診の質の向上、病院の環境改善などでのボランティア活動に取り組みました。しかし、188bet体育_188bet备用网址の感染拡大の影響から2年の任期の半ばで日本に緊急帰国。再び、北海道で助産師として臨床の現場に戻りました。そのなかで、SRHRの必要性を強く感じ、コロナ禍で中絶ケア188bet体育_188bet备用网址に取り組む中込さと子教授が教壇に立つ母校信州大学の大学院?修士課程に2021年4月に入学。2023年3月に修了し4月からは博士課程へ進学するとともに、助教として学部生への教育にも携わっています。
 佐藤さんは2023年3月に中絶ケアについての修士論文をまとめました。日本では中絶ケアが助産師の個人レベルの取り組みにとどまり全容が把握できていないため、その実態把握を行いました。指導教員である中込教授を通じて出会った(一社)“人間の性”教育188bet体育_188bet备用网址協議会全国助産師サークルに所属している助産師を中心に、SRHRに関心を持ち、中絶の相談やケアに携わった経験のある44名の助産師に協力を仰ぎ、聞き取り調査を実施。その結果、中絶前、中絶処置時、中絶処置後の3つの段階で全国の助産師がどのようなケアをしているのかが明らかになりました。具体的には、「女性の意思を尊重したケアを行っていること」、「中絶を選んだ人に対しては処置間際まで気持ちの整理が進むよう親身にサポートしていること」、「処置後の精神的支援も手厚く行っていること」などが分かりました。
 今後、佐藤さんは中絶を行った当事者に対しても聞き取り調査を行い、そのニーズの把握に取り組みたい考えです。そして、そこで分かったことを助産学会などを通じて全国の助産師に知ってもらうことで、「中絶ケアが当たり前になる社会を目指していきたい」と、佐藤さんは話します。
 中絶ケアの社会的意義はとても大きいだけに、これからの佐藤さんの活躍からますます目が離せません。

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ご本人から一言

 私もそうだったのですが、SRHR「性と生殖に関する健康と権利」の問題は、途上国の問題と捉えがちです。しかし、実は日本でも多くの女性が悩みを抱えています。その悩みを解消し、全ての人のSRHRが尊重され自分の人生をいきいきと暮らせる世の中になるよう188bet体育_188bet备用网址に尽力します。

指導教員から
信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(保健学系)
中込 さと子
教授

 JICA青年海外協力隊のモロッコでの国際ボランティアと北海道の2つの病院での助産師経験を経て、母校の信州大学に帰りSRHRの188bet体育_188bet备用网址をしたいと思ってくれたことをとても嬉しく思っています。こうした多様な社会経験、臨床経験を積んだ大学院生は稀であり、その観点から佐藤さんにはSRHRの分野において「チェンジエージェント」(社会を変える鍵を握る人)になる人材として大いに期待しています。特に、国際ボランティアの経験を活かし、SRHRの在留外国人に関する分野で佐藤さんの経験が活かせるのではないかと思っています。外国人技能実習生が適切な中絶ケアを受けられずに不幸な事件を起こすケースも出てきているだけに、社会的意義は大きいでしょう。

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信州大学の大学院は総合大学の強みを活かして学際的な188bet体育_188bet备用网址科と専攻があるのが特徴。
学部との関係はこの図をご覧ください。

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