「気障でけっこうです」で人文学部4年小嶋諒さんが小説家デビュー信大的人物

「気障でけっこうです」で人文学部4年小嶋諒さんが小説家デビュー

「気障でけっこうです」で人文学部4年小嶋諒さんが小説家デビュー

 平成26年1月に人文学部4年の小嶋諒さん(ペンネーム:小嶋陽太郎さん)が第16回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した小説「気障でけっこうです」が、10月30日に発売されました。

 同賞は、作家の三浦しをん氏や万城目学氏を輩出した作家エージェント?ボイルドエッグズが創設、才能ある新人のための新しい文学賞で、小嶋さんは史上最年少、22歳での受賞です。受賞作品は、競争入札によって出版されるシステムで、小嶋さんの作品は株式会社KADOKAWAから出版されています。

 審査員の村上達朗氏が松本キャンパスにお越しになりFM長野による取材が行われましたのでその一部を紹介します。

小説を書き始めたきっかけは…

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インタビュアーの唐木さやかさん(FM長野パーソナリティ)とのツーショット。(※彼女も信州大学の卒業生です)

 小嶋さんが小説を書き始めたのは、大学2年生の終わりから。今回の受賞に至るまでわずか2年半程度。そのうえ、長編小説自体書いたのは本作で2作目ということで、周囲も驚くスピード受賞となりました。小説を書き始めたきっかけは「なんとなく、講義に出る以外のこともやりたいなあと思って書き始めたんです。小説は冒頭のシーンがまず画として浮かび、そこから“適当に書き始め”ました。ラストシーンまでの展開を決めないまま書き、また、住んでいる松本の川や公園などもイメージしつつ作品の世界が広がっていきました」(小嶋さん)

受賞の決め手と今後の目標

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発売された単行本の装丁。ポップなイラストは漫画家の西村ツチカ氏が手がけたもの。

受賞の決め手は…

賞の審査員を務めた村上達朗氏は、この作品の決め手を、「語り口の面白さ、うまさが飛び抜けていた」点だと語っています。「非日常の存在である“幽霊”を登場させながらも、それを違和感なく、日常の中に地続きで溶け込ませている。話も設定も人物も、細部に渡り考え抜かれていて、最後まで楽しめた。文章力、発想力がすごい」(村上氏)

今後の目標は…


「とりあえず一定のペースで本が書ければ…まだ先のことは考えられないです。自分と同年代の若い人たちをはじめ、できるだけたくさんの人に読んでもらえたらうれしいです」(小嶋さん)

あらすじ


女子高生のきよ子が公園で出会ったのは、地面に空いた穴に首までぴっちりと収まった“おじさん”だった…男は、なぜおとなしくしっぽり穴に収まっているのか!?きよ子は男を助けるために奔走するが、その途中運悪く車にはねられ病院へ。そして意識を取り戻した彼女の前に、公園で埋まっていたあの男が突然現れた。「私、死んじゃったんですよ」そう、男は幽霊となっていた!?髪をピタッと七三に分けた、“シチサン”と名乗るどこか気弱な幽霊と、今どき女子高生の奇妙な日々が始まった―。第16回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。


(「BOOK」データベースより)


『気障でけっこうです』特設サイト?http://www.kadokawa.co.jp/sp/2014/kiza/

作品を読んでみて???

 出だしのちょっと癖のある文章を読み進めていくうちに、加速して、いっきに最後まで読んでしまいました。
 主人公のきよ子は、怠惰な日常を過ごす女子高生。休日に昼過ぎまで部屋でダラダラ、雨の中を一人で散歩。同級生に話しかけるのにしどろもどろになってしまうあたり、コミュニケーション能力は低めのようです。
 そんな彼女の日常が、幽霊?シチサンと出会って変わります。
 雨の降る寂れた公園に首まですっぽり埋まった状態で、人生への諦めを口にする謎のおじさん。幽霊となってきよ子の前に現れた彼は、いつの間にか、ごく自然にきよ子の傍にいます。
 きよ子に無視されたりしているあたり、シチサンには、幽霊としての存在感はおろか、年上としての威厳も普段ほとんど感じられません。けれど彼は、大事なことをちゃんと教えてくれる大人です。シチサンのセリフは、ときにイラっとさせられることもありますが、ちょうどいい温度で心に届きます。
 物語中盤に深まる謎、シチサンはなぜ穴に埋まって死ぬことになったのか?そして、なぜ幽霊になって現れたのか?その答えに近づくため、怠惰だったきよ子が自分から動き出し、一筋縄ではいかない現実に突っ込んでいきます。シチサンが全てを懸けたものを知った時、切なさと愛しさが込み上げます。
 この作品を語るのに欠かせない登場人物が、きよ子の幼なじみのキエちゃん。彼女は普通の女子高生像からはかなり外れていて、学校では浮いた存在です。けれど、いつも飾らずカッコよくて、きよ子の唯一無二の味方です。私もこんな友達欲しい!と思いました。
 不器用な人たちが、人と関わり、ときに取り返しのつかない失敗をして後悔しながら、それでも自分の日常を生きていく。物語を最後まで読むと、実はシチサンはすごくカッコいいのでは、と思います。いっきに読めながら、じっくり味わえる、そんな作品です。

広報室職員S

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