新生児医療への独創的アプローチ シリアスゲームで周産期?小児医療を学ぼう!信大的人物

信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(医学系)三代澤 幸秀 助教の挑戦

 ゲームを通じて社会問題などへの理解を深める「シリアスゲーム」と呼ばれる新たな手法を使って、周産期?小児医療への理解の醸成を目指す188bet体育_188bet备用网址者がいます。
 信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(医学系)の三代澤幸秀助教です。自ら制作に携わりスマートフォンアプリのシリアスゲームを次々と開発し、周産期?小児医療への独創的なアプローチとして話題を呼んでいます。(文?佐々木 政史)

????? 信州大学広報誌「信大NOW」第144号(2024.3.29発行)より

hajimeteno.png

第3弾となった「はじめての感染対策」のタイトルとビジュアル。

多職種連携の重要さを伝えたい…新たな手法を模索

df016851538bb01834c3573588b80734.png

信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(医学系)
三代澤 幸秀 助教

 信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(医学系)の三代澤幸秀助教は、新生児集中治療室(NICU)で日々、新生児医療に向き合っています。その中で、「大きく二つの課題がある」と話します。ひとつは経済的?家庭的な要因で子育てが困難と予想される「社会的ハイリスク妊婦」の存在です。子どもの虐待などにつながる懸念もあり、妊娠期から産褥期、育児期まで長期的な支援が必要となります。この社会的ハイリスク妊婦は2009年から倍増しており、早急な対応が求められています。

 もうひとつの課題は、「医療的ケア児」です。これはNICUに入院後も人工呼吸器や胃ろうなどの使用、痰の吸引などの医療的ケアが日常的に必要な児童のこと。年々増加傾向にあり、2021年時点で、19歳以下の在宅で全国に約2万人いると推計(厚生労働省調べ)されています。

 三代澤助教は「こうした課題へ対応するために多職種連携が重要だ」と話します。社会的ハイリスク妊婦や医療的ケア児の支援については、医師や保健師、ソーシャルワーカー、助産師、教育者、行政などが関わっていますが、こうした多様な職種が相互に連携することで、より効果的な支援が可能になるというわけです。ただ、どのように連携したらよいのかイメージが難しいのも事実―。そのなかで三代澤助教がまず注目したのが映像?演劇という手法でした。妊産婦支援団体のシンポジウムや学会において、映像と演劇の手法を用いて、多職種連携のイメージを提示しました。その結果、涙を流して感動する人も多くおり、「この手法は伝わるぞ!」と三代澤助教は自信を持ったそうです。

pc.png
bamen1.png
bamen2.png

「はじめての感染対策」のシナリオ構成といくつかの場面紹介。

難しい社会問題も楽しみながら学べるように

 そのような折、188bet体育_188bet备用网址の感染拡大により、人を集めて映像?演劇で伝えることが困難な状況に陥ってしまいました。「コロナ禍でも多職種連携のイメージを伝えたい。何かやり方はないか―」、そう考えていた三代澤助教が思いついたのが「シリアスゲーム」でした。

 シリアスゲームとは社会問題の解決を目的としたゲームです。三代澤助教はエンターテインメント性を持ち小説のように進むノベルゲームの手法を使い、専門用語もストーリーの中で説明することで、難しい社会問題も楽しみながら考え、理解を深めることができると考えています。また普段は入れない施設に入る疑似体験ができることもゲームの利点のひとつです。

 三代澤助教はこれまでにスマートフォンアプリの3つのシリアスゲームを制作しています。

 1作目は、主に専門家向けに制作した「Circle of Support」。これは社会的ハイリスク妊婦の把握と切れ目のない支援のための保健?医療連携システム構築に関する188bet体育_188bet备用网址班が執筆した「社会的ハイリスク妊婦への支援と多職種連携に関する手引書」に準拠したアプリで、ゲーム形式で手引書の内容を学習できるというものです。全作に共通しますがプレイヤーは小説のように物語形式でストーリーを進め、要所での選択によって展開が変化します。

 次に2作目として2022年7月に制作したのは、NICUを体験できる「はじめてのNICU」。対象の間口を医療系学生や中学?高校生にまで広げることを目指し、キャラクターをアニメ調にしたり、音声合成ソフトを使ってフルボイスにするなど、クオリティをより高めました。

 そして、2023年9月にリリースした最新作「はじめての感染対策」は、医療従事者?医療系学生を対象とし、病院内での感染症対策教育を目的としたものです。三代澤助教の取り組みの評判を聞いた病院からの依頼を受けて制作しました。

 また、このゲームの制作について、当初はストーリーづくり、取材、撮影、プログラミングのすべてを三代澤助教一人で行っていた、ということには驚かされました。後にプログラミングが得意な医学生や、イラストが得意なアート系学生などがスタッフに加わり、「クオリティがぐっと向上した」とのこと。また、医学生はこのゲームの制作に関わることで、医学への興味関心がより高まるといった教育の面でも効果があったそうです。

4作目となるRPGも開発中!児童発達支援センターを疑似体験

 現在、三代澤助教は2024年4月のリリースを目指し、4作目のシリアスゲーム「はじめての児童発達支援」を制作中です。これまでは小説形式のものでしたが、新作ではRPG形式を採用して、よりエンターテインメント性を高めたい考えです。長野市の児童発達支援センター「にじいろキッズらいふ」を舞台に設定し、小児科関係者などを対象に児童発達支援施設とはどういったところかを疑似体験しながら学べるようにします。

 一方で、「知ってもらえなければ意味がない。広報活動にも力を入れていきたい」と三代澤助教は話します。現在、ゲームなどのコンテンツの制作は、三代澤助教が代表を務める一般社団法人「M-terrace」で行っていますが、そのホームページを通じた情報発信を強化していきたい考えです。

 今後の課題は、継続的に活動を続けていける仕組みづくりです。制作資金は助成金に大きく頼っているのが現状で、いわば自転車操業のような状態。制作スタッフは学生が大半であり、卒業後は穴があきます。そのため、資金面では企業とのコラボレーションを、制作スタッフについてはプロとの連携も検討中とのことです。外部との連携も視野に入れながら、どのように発展していくのか―。今後ますます三代澤助教の取り組みに注目が集まりそうです。

game2.png
game1.png

第4弾となる「児童発達支援」ゲームの制作中画面。RPGで楽しく学びながら進む。

M-terraceのWebサイト

M-terrace

医療的ケア児支援に役立つ情報サイト。今回紹介したシリアスゲームはこちらから!

ページトップに戻る

MENU