影絵のような観測手法で 銀河天文学最大の謎に挑む信大的人物
信州大学 学術188bet体育_188bet备用网址院(総合人間科学系) 三澤 透 教授
ガリレオが自作の望遠鏡で天体観測を行ってから約400年。今や人類は最新鋭の大型望遠鏡を通して、遥か遠くの天体を観測できるようになっていますが、まだまだ宇宙には多くの謎が残されています。こうした中で、信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(総合人間科学系)全学教育センターの三澤透教授は、「銀河の成り立ち」という銀河天文学最大の謎のひとつの解明に挑んでいます。しかも、その手法は日本では珍しい“影絵”のようなユニークなものだと言います。一体どういうことなのか、お話を伺いに188bet体育_188bet备用网址室を訪ねました。(文?佐々木 政史)
????? 信州大学広報誌「信大NOW」第147号(2024.9.30発行)より
珍しい観測手法で100億光年かなたの銀河を188bet体育_188bet备用网址
「1986年、小学5年生の時に、双眼鏡でハレー彗星(※1)を見たんです。その瞬間、何かのメッセージを受け取ったんですね…」。このように語り、少年時代の原体験から一貫して宇宙に対する興味が尽きないというのが、信州大学学術188bet体育_188bet备用网址院(総合人間科学系)全学教育センターの三澤 透 教授です。三澤教授の188bet体育_188bet备用网址分野は「銀河天文学」。これは、天体望遠鏡などを用いて銀河を観測し、銀河の誕生と進化の謎に迫るものです。宇宙には数千億個という膨大な数の星が集まって形成された銀河が、実に数千億個以上もあると考えられています。銀河は宇宙を構成する最も重要な要素のひとつであり、その謎を明らかにしていくことは、宇宙科学にとって重要な意味を持ちます。
三澤教授の188bet体育_188bet备用网址の最大の特徴は、本人曰く“影絵”のような手法を使って、約100億光年という気が遠くなるほど遠い銀河の観測を行っていることです。「比較的近い距離にある銀河であれば、天体写真を撮影して分析する手法でも188bet体育_188bet备用网址できます。華やかなので取り組む人も多いです。しかし、100億光年かなたの遠方銀河になると難しい部分もあります」。このように三澤教授は“影絵”の手法にこだわる理由を説明します。
では、これは具体的にはどういった手法なのでしょうか。一般的な影絵は、光源があり、その手前にあるものが、影として映ることでできます。一方で、三澤教授の影絵の手法では、光源に当たるものが、「クェーサー」(※2)と呼ばれるとても強い光を放つ天体です。このクェーサーからの光は地球に届く過程でガスや塵などの様々な物質を通過します。この際、ガスや塵などの物質がクェーサーからの光を吸収し、地球に光が届く際にはいわゆる影絵(吸収線)のようなかたちになります。この影絵を、すばる望遠鏡やコンピューターなどを使って、光の色や強さが分かるスペクトルのかたちで見えるようにできるというのです。
※1)ハレー彗星:約76年ごとに太陽系を一周する周期彗星。最も有名な彗星の一つで、条件が良ければ肉眼でも観測できる。
※2)クェーサー:銀河の中心にあるブラックホールにガスや塵などが引き寄せられる際に摩擦を起こして熱で強く発光したもの。
天文学の面白さを広く一般にも伝えたい
一方で、三澤教授は最先端の188bet体育_188bet备用网址の傍ら、天文学の面白さを広く一般に伝える活動にも力を入れて取り組んでいます。大学での教育という点では、所属する全学教育センターで全学部の1年生に向けて、教養科目のなかで天文学の面白さを伝え続けています。三澤教授の授業を受けた学生は今年でなんと延べ1万人に達しました。また、学外では、長野市立博物館からの依頼でプラネタリウムの番組の監修や、阿智村でのギネスチャレンジ、天文講師役での映画出演などに協力しています。
「長野県は夜空の暗さや標高、晴天率などが天体観測に適していて、実は“宇宙県”(※3)とも言われている。もっと天文に関する一般のリテラシーを高めて、長野県の文化と言えるところまで高めていきたい」と三澤教授は話します。
少年時代にハレー彗星を見た瞬間から今も変わらず宇宙に惹きつけられているという三澤教授。その感動を広めたいという想いが、普及活動の原動力にありそうです。
※3)全国で最も平均標高が高く(つまり宇宙に近く)、また多くの天文188bet体育_188bet备用网址?教育施設があることなどから、2016年「長野県は宇宙県」連絡協議会発足。