1979年山梨県生まれ。教育学部(学校教員養成課程)卒業。長野県内で小?中学校の非常勤講師を経て、現在山梨県立韮崎工業高等学校教諭。保健体育科。信州大学在学中はスキー部に属し、モーグル競技に熱中した。卒業後トレイルランニングと出会い、4回目の挑戦で2008年第16回日本山岳耐久レース優勝。2012年UTMF(ウルトラトレイル?マウントフジ)3位、 同年グランド?レイド?デ?ピレネー優勝。 2013年アンドラ?ウルトラトレイル2位等。
世界で活躍するトレイルランナー 山本健一さん信大的人物
トレイルランニングは、山野をランニングするスポーツ。山本健一さんは、トレイルランニングの世界では"ヤマケン"と呼ばれ、今、日本で最も注目されているランナーの1人だ。2013年6月23日に、世界一厳しい100マイルレースといわれるアンドラ?ウルトラトレイルで準優勝を果たした。地元山梨では高校教師として教壇に立ち、部活指導に燃える先生でもある。信大時代のことからトレイルランニングの魅力などについて聞いた。
(文?中山万美子)
Profile
スキー?スキー?スキーの信大時代
信州大学を選んだ理由の最大の理由は、「立地条件」。
山本さんのご両親は2人共、体育教師だった。山本さんは4才ごろからスキーを始め、小学校でサッカー、中学は陸上部、高校は山岳部とスキー部に入っていた。高校に入学したエピソードはシンプルで力強い。何かで日本一になりたいと思っていた山本少年は、「山岳なら日本一になれる」と親戚のおじさんから聞くと、当時一番強かった韮崎高校に入学した。厳しい練習にも耐えて思い描いたインターハイに出場、優勝を果たした。
次に興味を惹かれたのがスキー競技のモーグル。部活ではアルペンをしていたがテレビで初めて見たモーグルに心奪われ「カッコイイ!俺はモーグルでオリンピックを目指すぞ」と誓う。
さっそく長野オリンピックでモーグル会場(長野市?飯綱)を探すと、会場に一番近いところに信州大学教育学部があった。迷わず受験し、合格。入学するやいなやスキー部に入部する。せっせとスキー場に通う傍ら、アルバイトもこなした。「家庭教師、料理屋、ガソリンスタンド、運輸業???バイト代はすべてスキーに使いました」。4年次には、一ヶ月間ニュージーランドへ遠征、「本気でオリンピック」を目指していた。
スキーにケガは付きものだ。山本さんも肋骨、鎖骨の骨折、足首のけが、膝のじん帯、半月板損傷と多くのケガを負っている。だがケガへの恐怖心はない「治して、またやればいい」とあっけらかんと言う。
スキー以外の思い出を聞くと「教育実習かな???、夜中にプールで泳ぎ方を188bet体育_188bet备用网址したり、同じ実習生と一生懸命に練習して、マット運動の演技披露を生徒の前でやったりと。睡眠は1、2時間でした」。徹底的にやってしまう性格なのだ。
トレイルランニングと出会う
トレイルランニングの魅力
夜を抜け、走り始めてから24時間を過ぎるとランナーズハイ状態となり、それからヨロヨロになって幻覚も見えてくる。だが、ゴール前には清々しい笑顔を見せて「やばい、最高???」と歩きながら、観客の声援に応えていた。
「苛酷だけど、平和で穏やかなスポーツなんです」
他のランナーとよく話をしながら走る。アイベックス(野生の牛)の群れを縫うように走り、川をジャブジャブ渡り、自然を楽しみ、自然と一体となる100マイル。「夜は暗いところでもだんだん目が慣れてくると、足場もよく見えてきます。月が出ていると本当に明るいですね。僕は時々ライトを消して走るんです。集中力が高まり、五感が冴えてきて、無欲?無心、ただ獣のように走ります。それは最高にリラックスした状態です。普段ではありえない、そういう自分になりたくてやっているところもあります」
モットーは、「想いは形になる」「心から楽しむこと」
山本さんは「思い続けてやっていると、いつかは形になっていく」という。「遅かれ、早かれ必ず形になる」それを信じて継続する、継続してきたと。それから「心から楽しむことが大事だと思います。楽しんで体がリラックスすると、潜在能力も発揮できる。人間の持っている潜在能力はものすごいものがあるといいますから。楽しんで体が動いて、笑顔になって、その笑顔が周りもハッピーにしていく」。
最後に教員として高校生に望むことを聞くと「楽しい経験も大切ですが、苦しいことにぶつかれるようになってほしい。将来苦しいことを乗り越えられるように、苦しさを乗り越える経験をさせてあげたい」と話す。顧問をする山岳?スキー部のOBたちは、週末になるとやってきて一緒に部活指導をしてくれる、お盆休みには勢揃いするそうだ。トレイルランニングのことを「自己満足ですから」という山本さんだが、その姿勢、行動から生徒たちは、とても大きなことを学んでいるに違いない。いや、それは、生徒たちだけではない。